ヤクルトの西浦直亨内野手(32)とDeNAの阪口皓亮投手(23)の交換トレードが決まり、26日に両球団が発表した。
西浦は法大からドラフト2位で2014年に入団。通算打撃成績は571試合で打率2割3分6厘、38本塁打、188打点。昨季から出場機会が減っていた。阪口は北海道・北海高からドラフト3位で18年に入団。通算成績は15試合で2勝6敗、防御率5.31。[ 7/26(水) 16:10配信 時事通信 ]
3.西浦直亨(2014-2023途)
法政大学より2013年ドラフト2位指名。背番号は福地寿樹の引退で空き番となっていた「3」。
2014年3月28日。開幕戦となるDeNA戦(神宮)で8番ショートでスタメンに抜擢されると,そのプロ初打席で大学1学年先輩の三嶋一輝から3ラン本塁打。開幕戦でルーキーの初打席初球本塁打は日本プロ野球史上初の快挙というド派手なデビューを飾ったが,以降は結果を残すことが出来ず,4月26日に二軍降格。結局ルーキーイヤーは14試合の出場に留まり,打率.156と即戦力の期待に応えることはできなかった。
2015年。ヤクルト球団としては異例のFAで北海道日本ハムから大引啓次を獲得。2年目を迎えた西浦の出番は大引離脱時が主で出場26試合,打率.295,1本塁打,打点5に終わった。
2016年は大引の故障もあってショートのポジション争いは森岡良介,谷内亮太,今浪博隆らとで混沌とした。そんな中で7月22日中日戦(ナゴヤドーム)でラウル・バルデスから自身初となる満塁本塁打。9月28日DeNA戦(神宮)29日DeNA戦(横浜)で自身初となる2試合連続本塁打を放つなど72試合に出場し,7本塁打とパンチ力をアピールした。

翌2017年はレギュラーの期待も込められ,サードで自身2度目の開幕スタメンに名を連ねた。前年と同じ72試合に出場したが,本塁打0。打率.208と大きく成績を下げ,チームも低迷した。

2018年。若手有望株廣岡大志とショートのレギュラー争いが勃発。オープン戦で結果を残せず開幕スタメンを逃したものの,4月4日広島戦(神宮)で前日に頭部死球を受けて離脱した川端慎吾の代役としてサードでのスタメン出場の機会を得ると,決勝打を含む3安打・2打点の大暴れ。4月7日巨人戦から3戦連続複数安打をマーク。川端が戦線復帰後も好調を保ち,5月11日DeNA戦(横浜)では5打数5安打。9月19日阪神戦(神宮)では2打席連続本塁打を放つなど,キャリアハイとなる138試合に出場。自身初の2桁本塁打にも到達した。


2019年は故障に泣いた。5月12日巨人戦(東京ドーム)で下半身のコンディション不良を訴え翌13日に登録抹消。その後7月8日に一軍に復帰したものの,7月18日巨人戦(神宮)で左肘を骨折するなど,出場試合数は44試合に終わった。

2020年。球団はMLBでゴールドグラブ賞を受賞した高い守備力を誇る外国人選手アルシデス・エスコバーを獲得したが,新型コロナの影響で開幕が大幅に延期となった。無観客で行われた6月25日阪神戦(神宮)で藤川球児から逆転サヨナラ本塁打。7月2日広島戦(神宮)では2度の同点本塁打を放つなど勝負強い打撃を発揮。再びレギュラーショートとして全120試合のうち101試合に出場。藤川から放った本塁打で「2020スカパー! ドラマティック・サヨナラ賞」年間大賞を受賞した。


2021年長年のライバルであった廣岡が巨人にトレード移籍したことで,一本立ち。堂々と開幕スタメンにも名を連ねたが,そこから極度の不振に陥り,ルーキーの元山飛優にスタメンを譲る機会が増え,6月末には出場選手登録を抹消される。それでも後半戦途中から一軍復帰すると9月には打率.321、OPS.838と活躍。10月8日阪神戦(神宮)試合前まで27イニング連続無失点と好投していた橋遥人から本塁打を放ちチームのマジック点灯に貢献。日本シリーズでは全試合ショートを守り,チーム14年ぶり日本一の輪の中心となっていた。
しかし2022年。今度は高卒3年目の長岡秀樹がライバルに。開幕スタメン濃厚と見られていたが,長岡がオープン戦終盤で4打数4安打など猛アピール。開幕投手が阪神藤浪晋太郎ということもあり左の長岡にスタメンを奪われることに。当初は相手投手の左右で長岡との併用かと目されていたが,津臣吾監督は長岡をショートで完全に固定。西浦はいわば干された状態となり4月14日に登録を抹消されてしまう。その後出番は長岡がコロナ陽性で離脱を余儀なくされた時期のみで,自己ワーストとなる出場6試合。14打数1安打の打率.071に終わった。
2023年はプロ10年目にして初の二軍キャンプスタート。これが意味するものについては折に触れてきたつもりであった。それでも
5月26日広島戦(マツダ)で一軍昇格してきた。ただこの試合である程度の覚悟を感じたので,もう一度書き起こしておく。
西浦直亨。オープン戦で極度のスランプに陥り,そこで長岡秀樹が台頭。完全に居場所を失い,二軍暮らしの日々。長岡離脱時も結果を残せず早々に一軍登録を抹消され,自己ワーストの6試合14打数1安打打率.071に終わった昨年。
今年の春季キャンプは入団10年目にして初の西都キャンプスタート。春季教育リーグで死球を受け途中退場。そこから約一ヶ月行方不明。その間に誕生日を迎え気がつけば32歳。それでも4月18日に実戦復帰。ショートのポジションは19歳小森航大郎が守ることを最優先とされながらも,打率.300台をキープしていたが,言い方悪いが完全に構想外となり二軍の埋め合わせ要員。今季の一軍出番はほぼ無いであろう。そう思われても仕方ない立場まで追い込まれていた西浦が,塩見の離脱もあってキャンプオープン戦を通じて初めて一軍に呼ばれた。
そして合流最初の試合。4回表1死一二塁投手高梨の代打で早速起用された。2球で簡単に追い込まれたが,2球見極めて5球目を基本に忠実なセンター返し。二塁走者濱田を返して2年ぶりの打点をマーク。そこから打線がつながりサンタナにもタイムリー。3点差に追い上げ,そのまま山田の代わりにセカンドの守備に就いた。いや就かせてもらえた。そして第3打席でも先頭打者として内野安打で出塁。昨年年間1本しか放てなかった安打なのだ。。
散々チャンスを貰いながらも活かしきれなかった。西浦が9年かけても叶わなかったオールスター出場ゴールデングラブ受賞。これすら長岡は軽くやってのけた。将来性だって長岡だ。それは誰もが認める。
「フルスイングできなくなったら、外すからね」「フルスイングする限り、起用し続ける」
津監督の著書で明らかになった長岡とのやり取り。今季開幕から明らかにフライアウトが目立った。守備での貢献度もあるし打率云々ではない。その内容。今日も2点差に迫ってなお0死二塁で長岡に回ったが浅いライトフライ。ランナーを進めることが出来なかった。これが例えばなんとしてでも右方向でランナー進めるという意識があれば1死三塁。古賀の内野ゴロで1点差に詰め寄れたかもしれない。長岡個人の成長のためならフルスイングフライアウトランナー進められずそれでいいかもしれない。けれど野球はやっぱり団体競技なのだ。
今は21歳の若さだから許されているけれど,これを3年5年と続けていたらたちまちそのポジションはあっという間に奪われるはずだ。
長岡のためにポジションをそして野球生命を奪われかけた西浦。極限まで追い込まれられた男の意地。状況に応じた打撃。甘やかされただけでは長岡も成長しない。長岡のためにもチームのためにも西浦は壁になって欲しい。
かつて池山が岩村にサードのポジションを奪われたとき,池山がスタメン出場したがのちに「チームの顔なんだからちょっとの怪我で休むな」と激怒したことがあったと。そこから岩村は飛躍的に成長していった。そういう壁のような存在になって欲しい。
ハッキリ言ってヤクルトではもう出番は限りなくなかっただろうし,このまま残っても年齢的にもオフには何らかの通告があったはず。三浦監督とは奈良県の同郷で,「まだまだできると思っています。長打力もありますし、守備力もいいものを持っていると思います」と宮崎・牧負傷時のバックアップとして,異例ともいえるシーズン中の同一リーグ,さらに明後日から両チームは対戦を控えるという中で経験を乞われてのトレード移籍となった。
【記録】
・初出場:2014年3月28日DeNA戦(神宮)
・初打席・初安打・初打点・初本塁打:同上[三嶋一輝]
・開幕試合初打席本塁打 :セ・リーグ初,1950年戸倉勝城以来64年ぶり史上2人目
・開幕試合初打席初球本塁打 :史上初
・初盗塁:2015年5月9日中日戦(秋田こまち)[吉見一起−松井雅人]
・スカパー! ドラマティック・サヨナラ賞年間大賞:2020年
西浦と言えばファン感謝DAYを語るうえで欠かせなかった。
そもそもの始まりは2014年。「投手野手対抗歌合戦」という企画で三輪正義,藤井亮太と一緒にSMAPの『らいおんハート』を披露するのだが・・・

西浦独特の音程が公となり,すっかり名物企画に。
2016年はWhite Berryの『夏祭り』を披露しつば九郎が気絶

2018年は締めの『東京音頭』リサイタルを託された。

「突然のことで正直、驚いています。スワローズに入団して10年、たくさんの人に支えられて野球をすることができ、感謝しかありません。また、いい時も悪い時も応援していただいたファンの皆さまにもとても感謝しています。スワローズを離れることは寂しい気持ちもありますが、今回のトレードを新たなスタートとして、新天地で活躍することが、皆さんへの恩返しになると思って頑張ります。これからも応援よろしくお願いします」
3連覇の望みが絶たれた夜ではあるが,西浦にはひとり3連覇の可能性がある。因縁の廣岡と日本シリーズで対戦する可能性だって秘めている。ファームでは打率.306,4本塁打,20打点と腐ってはいない。若手にポジションを奪われるという全く同じ境遇で横浜DeNAに移籍した田中浩康コーチもいる。長岡にプロで10年やるということはこういうことだと言うものを見せつけてやってくれ。
色々複雑な心境で短時間に書いたので上手く纏まらないが,これをもって西浦直亨への惜別メッセージとしたい。