『総括2021』を「スワローズの歴史を紐解くと,これまで優勝翌年の順位はBクラスが7回中5回。リーグ連覇は1992年1993年の1回きり。球団史上2年連続日本一の栄光はいまだかつてない。その意味で2022年こそまさにチームとしての『真価』が問われる一年となるのかもしれない」と締めくくった。
1992-1993年以来となるセ・リーグ『連覇』という目標に向かい,就任3年目を迎えた高津臣吾監督が掲げたスローガンは「熱燕−NEXT STAGE−」。本来「演じる」を用いた「熱演」が使われるが,スワローズの選手が熱く演じるという意味が込められ「熱燕」と表現された。コロナウィルスという「熱」にも翻弄される2022年シーズンとなったわけだが,見事2年連続9度目のリーグ優勝,球団史上29年ぶり2度目となるリーグ『連覇』を達成。再び黄金時代の到来を予感させるチームへと変貌している。
シーズン回顧
コロナ禍となり3シーズン目。2019年以来,3年ぶりに新型コロナウイルスによるイベント人数制限が撤廃され,延長戦も3年ぶりに12回制で実施されることが承認された。一方で「特例2022」と呼ばれる,一軍選手登録枠ならびに外国人枠の拡大,コロナ感染の疑いや濃厚接触で出場選手登録を外れる場合に本来の10日間を待たずに再登録可能というルールは継続となった。
1月20日に行われた首脳陣スタッフによる一・二軍合同オンライン会議で,感染症対策のため,昨年同様コンディション不良を除いて原則キャンプ中の一二軍入れ替えを行わない基本方針が確認されていた。キャンプイン直前の1月27日に村上宗隆と高橋奎二が新型コロナウイルス陽性判定を受けたことで,両者は二軍西都キャンプスタートとなり,入れ替えで長岡秀樹が一軍浦添キャンプに招集された。
キャンプ期間中の対外試合は5試合で1勝4敗。対外試合チーム初本塁打を放ったのはベテランの荒木貴裕で,津監督は「このままでは勝てないと思います。このまま開幕すると大変なことになる。やはり個人の力,チーム力,すべて状態を上げていくことに専念したい」と危機感をあらわにした。
3月11日ソフトバンクとのオープン戦の試合前中村悠平が下半身の張りを訴え戦線離脱。開幕絶望となった。さらに16日には山崎晃大朗が,21日には今野龍太と星知弥がスクリーニングPCR検査でそれぞれ陽性判定を受けるなど,開幕を直前に控え前年日本一に輝いたメンバーが相次いで離脱を強いられた。オープン戦は13試合3勝9敗1分。同率ではあるが2年連続最下位に終わった。
そうした中迎えた3月25日阪神との開幕戦(京セラドーム)。開幕投手を託されたのは2年連続で小川泰弘だった。しかしその小川がピリッとしない。4回までに8失点でノックアウト。6回を終えて7点ビハインドと完全に劣勢だった。ところが―。7点を追う6回2死一塁。当初二軍スタート予定から一気に開幕「6番ショート」のスタメンを勝ち取った長岡がプロ初打点となるタイムリー二塁打で反撃の口火を切ると,7回0死から大下佑馬の代打で起用された濱田太貴がチーム第1号本塁打を放ち,8回には内山壮真のプロ初安打がプロ初打点となるタイムリーで1点差にまで接近。いずれもプロ初の開幕一軍を掴んだ“ヤングスワローズ”が打線に勢いをもたらし,9回表先頭山田哲人のソロ本塁打でとうとう同点に追いつくと,なお0死一塁からドミンゴ・サンタナバックスクリーンへ勝ち越しの2ラン本塁打をたたき込み,最終回はスコット・マクガフが締め,開幕戦ではプロ野球史上最大差となる7点差逆転勝利という劇的な白星で2022年シーズンのスタートを切った。勝ちは梅野雄吾についた。勢いそのまま2戦目は高橋,3戦目は高梨裕稔が阪神打線に得点を与えず,2008年以来14年ぶりとなる開幕3連勝を飾って,3月29日本拠地での開幕戦となる巨人戦(神宮)を迎えた。この試合の先発を託されたのは昨季チームトップタイの9勝を挙げた奥川恭伸。しかし4回1失点で途中降板。翌日に上半身のコンディション不良で登録を抹消されてしまう。
4月6日中日戦(神宮)ではサンタナが試合中に退くと,翌7日に下半身のコンディション不良で登録抹消。アメリカで半月板のクリーニング手術を受けるために帰国することになった。さらに4月17日DeNA戦(横浜)で2年連続最優秀中継ぎのタイトルを獲得していたセットアッパー清水昇が投球中に打球が右足を直撃し降板,翌々日登録抹消。日本一を支えた投打の柱までも相次いで欠く状況に置かれた。
追い打ちをかけるかのように4月21日には球団マスコットのつば九郎とつばみが濃厚接触者疑いに該当すると判断され,22日からの阪神3連戦(神宮)の出演を自粛。つば九郎は1994年4月9日から続いていた主催試合連続出場の記録がついに途切れてしまった。
チームは一進一退の戦いを強いられたが,日替わりヒーローでこの試練を乗り越えていく。4月6日中日戦(神宮)では松本直樹の自身3年ぶりとなる本塁打が決勝打に。12日広島戦(松山)では同点の8回裏に太田賢吾が押し出し四球を選び勝ち越しに成功。15日DeNA戦(横浜)で金久保優斗が初登板初勝利。23日阪神戦では石川雅規が史上3人目となる21年連続勝利を達成。大卒投手では自身の持つ記録を更新し史上最長となり,球団史上最年長勝利投手記録も更新した。30日DeNA戦(神宮)ではこの日史上201人目の通算1500試合出場を果たした青木宣親が自らを祝福する決勝打を放ちお立ち台に。開幕3連戦以来となる3連勝を飾って4月を終えた。
5月3日阪神戦(甲子園)から中村が一軍復帰。中村とのバッテリーで小川が今季初勝利を初完封で飾り,チームは今季初の4連勝と上昇気流に乗る。6日・7日巨人戦(東京ドーム)と村上がプロ野球史上9人目,球団史上初となる2試合連続満塁本塁打を放ち首位に立つと,8日巨人戦(東京ドーム)では1点ビハインドの9回表に山崎がこの試合まで負けなしのルーキー守護神・大勢から逆転のタイムリーを放ち同一カード3連勝。東京ドームの巨人戦3連戦3連勝は1997年以来実に25年ぶりという快挙で,木澤尚文にプロ初勝利が転がり込んだ。14日広島戦(マツダ)でアンドリュー・ジョーダン・コールが来日初勝利。原樹理は21日DeNA戦(横浜)でチーム最多となる4勝目をマーク。白星こそつかなかったが吉田大喜も2年ぶりの先発登板でゲームを作るなど投手陣に安定感が増し,交流戦に突入する。
劇的な幕開けとなった5月24日日本ハム戦(神宮)。先発サイスニードが5回1失点と試合をつくったが,その1点が重く圧しかかる展開で8回裏。代打内山壮がプロ初本塁打を放つ。これは球団史上最年少となる代打本塁打。これで同点に追いつき延長戦へ。延長10回表5番手今野が0死満塁のピンチを招く。ここで6番手田口麗斗がマウンドに。清宮幸太郎を三振。万波中世をショートライナー。宇佐見真吾をフルカウントから空振り三振。絶対絶命のピンチを20球で斬る好救援を魅せ,11回裏村上がサヨナラ本塁打を放つ。翌25日日本ハム戦(神宮)は,終盤目まぐるしく試合が動く展開。2度追いつくも,9回表3番手大西広樹が勝ち越しの2失点を喫し万事休すかと思われた9回裏。宮本丈が死球で出塁,塩見泰隆が二塁打を放ち二三塁。続く山崎が逆転のサヨナラ3ランを放ち,1988年6月15・18日以来34年ぶりとなる2試合連続サヨナラ本塁打による勝利。これが交流戦快進撃の序章だった。
27日東北楽天戦(楽天生命)では塩見が2006年グレグ・ラロッカ以来球団史上7人目となる3打席連続本塁打をマーク。翌28日楽天戦(楽天生命パーク)も勝利し,チームは30勝に到達。49試合目での到達は1961年(49試合)1995年(45試合)1997年(49試合)に次いで25年ぶり4度目のハイペース。31日ロッテ戦(神宮)にも勝利し2012年9月以来となる月間16勝。
6月に入っても勢いは止まらない。3日埼玉西武戦(神宮)では小川が自身6年ぶりとなる本塁打を放つとこれが決勝弾に。投手の本塁打による1-0勝利は,1953年金田正一,1978年松岡弘以来43年ぶり3人目の快挙。ドラフト2位丸山和郁にプロ初安打も生まれた。
9日オリックス戦(京セラドーム)では今野がプロ初セーブをマーク。勝利投手となった石川は歴代単独最多となる交流戦27勝目。これで球団タイ記録となる8カード連続勝ち越しを決め,最終カードはソフトバンク。初戦を制し迎えた11日ソフトバンク戦(PayPayドーム)。先発アンドリュー・スアレスがソフトバンク打線につかまり4回を終えて1-4とビハインドの展開。しかし5回表村上の2ランで1点差とすると,6回表再び村上が逆転の満塁本塁打を放ち,交流戦4年ぶり2度目となる優勝を決めた。翌12日にも勝利し2年続けて敵地・福岡でソフトバンクに同一カード3連勝。両リーグ最速で40勝に到達。現行18試合制では最高勝率となる14勝4敗0分勝率.778で交流戦を終えた。同時に球団新記録となる9カード連続勝ち越し。セ・リーグでは初めてパ・リーグ全球団に対して勝ち越しての完全優勝となった。
リーグ戦が再開されてもその勢いは衰えない。17日からの広島戦(神宮)で同一カード3連勝。21日からの中日戦(バンテリンドーム),24日からの巨人戦(神宮)をいずれも2勝1敗とし,プロ野球史上初となる11球団連続カード勝ち越し。28日からの広島戦(マツダスタジアム)にも同一カード3連勝を決め,6月は月間19勝(4敗)。これは2002年8月(19勝5敗2分)に並ぶ球団タイ記録で,月間貯金15は球団新記録。
7月2日DeNA戦(神宮)延長10回裏塩見がサヨナラ打を放ち,1965年南海の7月6日を上回り史上最速でマジック「53」が点灯。翌3日DeNA戦(神宮)では6月26日に支配下登録されたばかりの小澤怜史がプロ初勝利。チームは1954年南海に並ぶ14カード連続勝ち越しというプロ野球タイ記録を樹立した。
この間に市川悠太,ドラフト3位柴田大地がいずれもプロ初登板を果たし,プロ初奪三振を奪うなど若い芽を試す余裕すら見せていた。「連覇」にもはや死角なし。それほどまでに無双状態だった。ところが・・・
チームに激震が走ったのは7月9日だった。前日8日に山田と濱田が体調不良を訴えてPCR検査を受けたところ陽性が判明。それを受け定期PCR検査が実施されるとさらに,高津監督,石井弘寿投手コーチ,高梨,清水,田口,松本直,内山壮,奥村展征,長岡,丸山和,青木とスタッフ1名の計14名の陽性が判明。さらに翌10日には大松尚逸打撃コーチ,森岡良介内野守備走塁コーチ,佐藤真一外野守備コーチ,衣川篤史バッテリーコーチ,大西,中村,宮本,塩見とスタッフ1人の陽性が判明。二軍でも石山泰稚,川端慎吾らが陽性判定を受けており,一・二軍合わせ首脳陣・選手・スタッフ計27名が陽性判定を受ける非常事態に。予定されていた阪神戦(神宮)も中止となった。
松元ユウイチ作戦コーチが監督代行を務め,二軍から陰性が確認された杉山晃基,鈴木裕太,宮台康平,久保拓真,西田明央,嶋基宏,古賀優大,西浦直亨,元山飛優,内川聖一,武岡龍世,松本友,並木秀尊,渡邉大樹を招集し,12日中日戦(豊橋)に挑むことになった。この日は天候回復が見込めないため中止となり,13日中日戦(バンテリンドーム)から試合が再開された。
しかし主力不在の穴は大きくチームは3連敗。17日DeNA戦(横浜)には再来日後リハビリを進めていたサンタナを昇格させたが流れは変えられず2年ぶりの6連敗。19日巨人戦(神宮)でようやく連敗を止め,翌20日巨人戦(神宮)から津監督が復帰。離脱メンバーも続々復帰してきたが,即スタメンフル出場というわけにもいかずメンバー構成に苦心する日々は続いた。前半戦最終戦となった24日広島戦(神宮)でようやく連敗を止め,マジック「41」が再点灯。前半戦終了時の貯金22は1995年の21を上回り球団最多記録となった。
26日には,マイナビオールスターゲーム2022の出場選手およびNPBスタッフを対象に行われたスクリーニングのPCR検査でつば九郎も陽性判定。29日には坂本光士郎と千葉ロッテ山本大貴の交換トレードと,フレッシュオールスターでサヨナラ本塁打を放った赤羽由紘の支配下選手登録が発表された。
波乱万丈の7月。その最後の試合となる31日阪神戦(甲子園)でチームを救ったのが村上だった。負ければ同一カード3連敗。この試合も終盤まで劣勢だった。2点を追う7回表。村上キラーの左腕渡辺雄大から今季初安打となる本塁打を放ち1点差に迫ると,9回表相手守護神岩崎優から起死回生の同点弾で延長に持ち込み,11回表石井大智から3打席連続となる勝ち越しの2ラン本塁打でチームを勝利に導いた。
1日挟んで8月最初の試合となった2日中日戦(神宮)。初回の第1打席柳裕也からプロ野球史上14人目となる4打席連続本塁打。さらにさらに3回裏の第2打席でプロ野球史上初となる5打席連続本塁打。球史にその名を刻んだ。
5日巨人戦(神宮)でつば九郎が史上1羽目となる主催試合通算2000試合出場を達成。濃厚接触疑いと自身のコロナ陽性という2つの苦難を乗り越え,前“鳥”未到の域に到達。しかしチームはこの試合から2019年以来3年ぶりとなる7連敗を喫し,最大28あった貯金は16となり,最大17.5開いていたDeNAとのゲーム差は6.0まで縮まっていた。
1番山田,2番サンタナと打線を大きく組み替えて挑んだ14日DeNA戦(神宮)で連敗を7で止め,両リーグ最速で60勝に到達したものの,DeNAは本拠地横浜スタジアムで17連勝を飾るなど,8月16勝3敗という破竹の勢いで白星を重ねていた。とうとうゲーム差は4.0となり,26日から敵地横浜で直接対決3連戦を迎える。
初戦となった26日DeNA戦(横浜)。5回まで両軍無得点と緊迫した展開。6回表に村上の史上179人目となる通算150号本塁打となる3ランで先制。7回表にも村上の2打席連続本塁打でDeNAを突き放し先勝。翌27日DeNA戦(横浜)は村上が5打数5安打4打点。さらにパトリック・キブレハンが来日初本塁打から3打席連続本塁打を放つなど打線が爆発し16-4と大勝。28日DeNA戦(横浜)では4-4で迎えた7回表に村上の今季3度目となる3試合連続本塁打が決勝打に。負け越せば歴史的V逸もあり得た直接対決3連戦で,村上の1978年チャーリー・マニエルのもつ球団記録を更新する歴代2位タイとなる14打席連続出塁という大活躍もあり同一カード3連勝。DeNAに引導を渡した。7連敗もあった8月だったが,12勝11敗1分と2ヵ月ぶりに勝ち越した。
9月2日中日戦(神宮)。村上は大野雄大から本塁打を放ち,日本人選手では2002年松井秀喜以来20年ぶり史上6人目,NPB史上でも10人目15度目となる50号に史上最年少で到達。6日阪神戦(甲子園)では1963年野村克也,1985年落合博満に並ぶ日本人歴代2位タイの52号本塁打。本塁を踏んだ際野村元監督(享年84)に捧げるかのように天を仰いでみせた。9日広島戦(神宮)では大瀬良大地から歴代単独6位となる53号本塁打を放った。コロナ禍による緊急昇格から一気に信頼を勝ち取った久保がプロ初勝利を挙げた。
11日DeNA戦(横浜)。2リーグ制後投手では初めてとなる今季2試合目の小川による決勝打の1-0勝利で7月28日以来45日ぶりにマジック「11」が再々点灯。村上は13日巨人戦(神宮)で大勢から歴代2位,王貞治に並ぶ日本人最多タイ55号本塁打を放った。
17日中日戦(バンテリンドーム)延長12回表代打の神様川端の一振りでマジックは「8」となり,クライマックスシリーズ進出を確定させた。18日阪神戦(甲子園)に勝利しマジック「7」,2位以上が確定した。21日中日戦(バンテリンドーム)石川の通算183勝目でマジック「4」。24日DeNA(神宮)は試合前の大雨で試合開始が1時間30分遅れたが,球場スタッフならびに球団職員の執念が実りマジック「2」と王手をかけた。
そして迎えた25日DeNA戦(神宮)。0-0のまま9回裏。先頭ホセ・オスナがショートへの内野安打で出塁すると代走に塩見。中村が初球で犠打を決め,打席には丸山和。前進守備の左中間を真っ二つに破り,塩見が生還。2015年高井雄平以来7年ぶり。新人選手では史上初となるサヨナラ打で,2年連続9回目のリーグ優勝。球団では29年ぶりとなるセ・リーグ「連覇」を決めた。30日広島戦(マツダスタジアム)ではドラフト1位山下輝がプロ初勝利を挙げる。
10月2日阪神戦(甲子園)ドラフト5位竹山日向がプロ初登板。嶋,内川,坂口智隆の引退試合となった今季最終の3日DeNA戦(神宮)。村上が最終戦の最終打席で56号本塁打を放ち,1964年王貞治の55本を抜いて日本人選手のシーズン最多本塁打記録を更新。本塁打王に加え,打率.318で首位打者,打点134で打点王のタイトルも獲得。2004年松中信彦以来18年ぶり史上8人目(通算12度目)で令和初となる三冠王に輝いた。
2位DeNAと3位阪神の対戦となったJERAクライマックスシリーズセ ファーストステージを制したのは阪神。神宮球場で開催されるクライマックスシリーズとしては初めて巨人以外との対戦カードとなった阪神とのファイナルステージ。
第1戦(神宮)。初回2死一二塁からオスナの3ランで先制すると,2回裏山崎のタイムリー,3回裏サンタナの犠飛。さらに6回裏サンタナの2ランと着実に加点し試合を優位に進め,7-1と快勝。
第2戦(神宮)。0-1で迎えた3回裏二死一塁から村上の2ランで逆転すると,4回裏長岡,5回裏オスナと本塁打の3発が効いて5-3と連勝。アドバンテージの1勝を含めて王手をかけた。
第3戦(神宮)。エース青柳晃洋の前に3安打無失点と完璧に封じ込められていたが,7回裏。3つの四死球で2死満塁とすると,山崎のファーストゴロをジェフリー・マルテが二塁へ悪送球。その間に二者が生還し1点差に迫り青柳をKO。代わった浜地真澄から2死満塁とし打席には村上。ボテボテのゴロを浜地が一塁へ悪送球。ボールが転々とする間にすべての走者が生還し逆転に成功。終わってみれば危なげない戦いで下克上を目指した阪神を一蹴し,2年連続日本シリーズ進出を決めた。MVPには3試合で2本塁打5打点のオスナが選ばれた。
2年続けてオリックスとの対戦となったSMBC日本シリーズ。
第1戦(神宮)。初回オスナのタイムリー二塁打で2点を先制。直後に同点とされたが,3回裏塩見のソロ本塁打で勝ち越し。山本由伸を攻略して初戦を取る。
第2戦(神宮)は3点ビハインドで迎えた9回裏0死一二塁から代打内山壮の3ランが飛び出し土壇場で同点に追いつき延長戦に突入。両軍の救援陣が踏ん張り,5時間を超える熱戦は規定により引き分けに終わった。
舞台を京セラドームに移して第3戦(京セラドーム)。5回表山田の3ランで先制。9回表には村上のタイムリーなどで3点を挙げ,投げては高橋が6回無失点と圧巻の投球で,対戦成績を2勝0敗1分とした。
第4戦(京セラドーム)。3回裏2死二塁から杉本のタイムリーが決勝点となり初黒星を喫すると,第5戦(京セラドーム)4-3とリードして9回裏守護神マクガフを投入したものの,内野安打とマクガフの失策で同点に追いつかれ,なお2死一塁から吉田正尚にサヨナラ2ランを浴び連敗。対戦成績は2勝2敗1分のタイとなる。
第6戦(神宮)。0-0で迎えた6回表2死一二塁から杉本にタイムリーを浴び先制され,打線は小刻みな継投の前に先頭打者塩見の放ったヒット1本のみに封じられる完封リレー。3連敗で王手をかけられてしまう。第7戦(神宮)。初回太田諒に先頭打者初球本塁打。5回表に押し出し死球と失策で4点を失う。7回裏オスナの3ランで1点差にまで迫ったものの,1点及ばず。4連敗で2年連続日本一は叶わなかった。
長谷川宙輝,嘉手苅浩太,ドラフト4位小森航大郎は一軍登録が無かった。一軍未登板に終わった山野太一,近藤弘樹,鈴木の3名には育成契約を打診し,下慎之介,丸山翔大,松井聖,岩田幸宏とは引き続き育成契約を結んだ。
【表1】セ・リーグ順位表

開幕直後にコロナに翻弄されたのは横浜DeNAだった。4月6日阪神戦(甲子園)の試合前に新型コロナウイルス陽性者が続出し,4月7日から10日までの4試合が中止となり,総勢22人の選手の入れ替えを余儀なくされた。最大借金9あったが,交流戦以降チーム成績が安定。夏場にはプロ野球史上3球団目,球団新記録となる本拠地17連勝を記録。三浦大輔監督は球団の生え抜き監督としては初のAクラス入りを果たした。佐野恵太が最多安打。
キャンプイン前日に矢野燿大監督が今季限りでの辞任を発表した阪神は開幕9連敗スタート。ところが最大借金16を完済するV字回復を見せた。来季からは岡田彰布監督が15年ぶりに復帰する。青柳晃洋が最多勝,最優秀防御率,最高勝率の投手3冠。湯浅京己が最優秀中継ぎ。近本光司が2年ぶり3度目の盗塁王。
スタートダッシュに成功したのは巨人だった。3月・4月を20勝11敗で首位に立つも,5月から4ヶ月連続負け越し。菅野智之,坂本勇人が離脱を繰り返し,2005-06年以来球団史上2度目となる2年連続勝率5割以下で4年ぶりにBクラスに転落。原辰徳監督は巨人軍史上初めて同一監督で2年連続勝率5割以下となった。戸郷翔征が自身初タイトルとなる最多奪三振。
交流戦で5勝13敗と低迷し,4年連続Bクラスに終わった広島。自慢の先発投手陣も機能せず,伝統だった機動力もほとんど使えなかった。佐々岡真司監督が退任し新井貴浩新監督が就任した。
立浪和義監督が就任し再始動を図った中日だったが,投高打低は顕著。チーム本塁打はリーグワーストと長打力ならびに得点力不足は明らか。DeNAには6勝18敗1分と大きく負け越した。岡林勇希が最多安打。ジャリエル・ロドリゲスが最優秀中継ぎ,ライデル・マルティネスが最多セーブのタイトルを獲得した。
チーム成績
【表2-1】チーム月別成績

【表2-2】チームホーム/ビジター別成績

ビジター43勝は,1997年の41勝を上回り球団新記録【表2-2】。
【表2-3】チーム曜日別成績

最長連勝は土曜日で4月22日阪神戦(神宮)から6月18日広島戦(神宮)にかけて9連勝。木曜日,金曜日,日曜日に5連勝が続く。最長連敗は金曜日で7月1日DeNA戦(神宮)から8月19日中日戦(バンテリン)にかけて7連敗【表2-3】。
【表2-4】チーム年度別成績推移直近10年間 ※()はリーグ順位

1997年以来25年ぶりに80勝到達。打率.318,56本塁打,134打点で三冠王を獲得した村上だが,個人成績のみに着目すると2013年のウラディミール・バレンティンは打率.330,60本塁打,131打点という成績を残しており,打率・本塁打では今年の村上を上回っている。同年は小川が16勝を挙げ最多勝を獲得している。それでいてチームは夏前から最下位を独走。野村元監督はかねがね「野球とは,団体競技である」「団体競技とは,選手が同じ方向を向いてプレーすることである」という野球論を唱えていた。「個」の力だけではチームは勝てない。こうしてチーム成績と照らし合わせると改めてその言葉の偉大さを感じる【表2-4】。
【表3】チーム別対戦成績

阪神,オリックス,千葉ロッテ,東北楽天には2018年以来4年ぶりの勝ち越し。巨人,中日には2020年以来2年ぶりに負け越し。目立つは中日との対戦成績で,今季6勝を挙げブレークした橋宏斗には,4試合対戦し0勝4敗,防御率2.59とカモにされたほか,R・マルティネスには13回無失点,ロドリゲスにも92/3回無失点と完全に封じられた【表3】。
【表4】守備成績

長岡はセ・リーグ遊撃手で最多の139試合に出場し,守備率.980でリーグトップ。併殺数は105で,中野拓夢(阪神)の85,小園海斗(広島)の65に大きく差をつけた。遊撃手の高卒3年目以内での受賞は1988年立浪和義(中日=1年目)同年田中幸雄(日本ハム=3年目)に次いで34年ぶり3人目【表4】。
【表5-1】交流戦順位表

セ・リーグが55勝53敗と勝ち越し, 2009年・21年に続き2年連続3度目の勝ち越し。2年連続の勝ち越しは交流戦初めて。また中止が1試合もなかったのも交流戦史上初だった。ヤクルトの14勝4敗,勝率.778は,18試合制となった2015年以降では2016年ソフトバンクの13勝4敗1分,勝率.765を超える最高勝率【表5-1】。
【表5-2】交流戦通算成績表[2005-2022]

上位6球団に変動無し。阪神は2年連続で交流戦2位となり中日と入れ替わり7位に。通算勝率も.500が目前と迫ってきた。ヤクルトが東北楽天を抜いて9位に浮上。11位広島は2019年から3年連続交流戦最下位で,12位DeNAと2.0差に迫られた【表5-2】。
DATA2022〜チームとしての成績
昨年同様リーグチーム成績を列挙してみた。赤字がリーグトップ。青字はリーグワースト。
【表6-1】チーム投手成績

小川がチームとしては2年ぶりに規定投球回に到達したものの,2年連続で2桁勝利投手を輩出できず,チーム勝ち頭は木澤とサイスニードの9勝止まりだった投手陣。先発防御率,奪三振率,被安打,被本塁打,被打率でリーグワースト。QS率はDeNAと並んでリーグワーストタイ。阪神に至ってはチーム防御率,先発防御率,救援防御率,ホールドポイント数,被本塁打,与四死球,失点,自責点,被打率,QS率,WHIPでいずれもリーグトップ。中日もセーブ数,奪三振数,奪三振率,被安打数でリーグトップ,被打率は阪神と並びリーグトップタイ。チーム防御率,先発防御率,救援防御率はいずれも阪神に次いでリーグ2位。
それでも「勝負どころで打たれている。これだけエラーしたら,防御率も良くなりますよ」と阪神岡田新監督が評論家時代に指摘したように,リリーフ陣の勝敗は阪神の14勝24敗に対し,ヤクルトは31勝17敗と決定的な差をつけた【表6-1】。
【表6-2】チーム打撃成績

打撃成績に関しても同様の傾向が見られ,出塁率,長打率,OPS,四球がリーグトップとなっているが,これは村上に牽引されている部分が多い。昨年トップだった代打安打数,代打率はリーグワーストとなった【表6-2】。
おわりに〜2023年シーズンに向けて
寺島成輝, 吉田大成,中山翔太,育成の内山太嗣が戦力外通告を受け,宮台は現役引退を選択した。
ドラフトで吉村貢司郎(投手・東芝),西村瑠伊斗(内野手・京都外大西高),澤井廉(外野手・中京大),坂本拓己(投手・知内高),北村恵吾(内野手・中央大),育成ドラフトで橋本星哉(捕手・中央学院大)を指名。合同トライアウトで前中日三ツ俣大樹,前阪神尾仲祐哉,前巨人沼田翔平を獲得。今年から導入された現役ドラフトで渡邊がオリックスに移籍することになり,千葉ロッテから成田翔を指名した。
スアレス,コール,キブレハンとは契約を更新せず,守護神としてリーグ連覇に貢献したマクガフがダイヤモンドバックスへ移籍することになった。新たにライネル・エスピナル,ディロン・ピーターズ,キオーニ・ケラの3投手を獲得した。
リーグ連覇を果たしたものの,来季は“投手陣の再構築”が求められる。「投手がしっかりとしないといけない。(日本一奪還へ)今のままじゃ駄目。もっと先発が1人、2人、3人と出てこなきゃいけない」と指揮官も課題に挙げている。
コーチングスタッフは,今季まで広島でヘッドコーチを務めていた河田雄祐外野守備走塁コーチが2020年以来3年ぶりに復帰し,今季限りで現役を引退した嶋がバッテリーコーチ兼作戦補佐に就任。松元作戦コーチ,伊藤智仁投手コーチ,石井投手コーチ,杉村繁打撃コーチ,大松打撃コーチ,森岡内野守備走塁コーチは留任。福川将和二軍バッテリーコーチが野手コーチ補佐に役職変更された。
ファームは池山隆寛二軍監督以下,城石憲之二軍チーフ兼守備走塁コーチ,尾花高夫二軍投手チーフコーチ,小野寺力二軍投手コーチ,松岡健一二軍投手コーチ,宮出隆自二軍打撃コーチ,畠山和洋二軍打撃コーチ,土橋勝征育成チーフコーチ,山本哲哉育成投手コーチが留任。佐藤外野守備走塁コーチ,衣川バッテリーコーチがそれぞれ二軍外野守備走塁コーチ,二軍バッテリーコーチとなり,緒方耕一二軍外野守備走塁コーチは退任となった。
社長・監督・選手と揃えて口にするのは球団史上初となる3連覇そして日本一奪還。黄金時代再来へ―一枚岩となったチームスワローズは歩みを進める。
参考文献
『サンケイスポーツ特別版ヤクルト連覇』2022年11月11日号,産業経済新聞社,2022.10
『東京ヤクルトスワローズ優勝記念号』週刊ベースボール10月27日号増刊,ベースボールマガジン社,2022.10
『連覇!東京ヤクルトスワローズ最強を,証明するV プロ野球2022シーズン総括BOOK』コスミック出版,2022.10
『SMBC日本シリーズ2022 公式プログラム』ベースボールマガジン社,2022.10
参考資料
「ニッカンスコア速報」
https://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/s03.html
https://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/s04.html
https://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/s05.html
https://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/s06.html
https://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/s07.html
https://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/s08.html
https://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/s09.html
https://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/s10.html
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