はじめに借金19+貯金23―5/26の
高田繁監督辞任を境に,これが本当に同じチームなのか?と思えるくらい劇的に変わった。敢えて高田監督と
小川淳司監督代行という二人指揮官が率いたチーム状況の違いを前面に出しながら総括することになるが,高田繁という人物そのものを否定する訳ではないということだけは断っておきたい。4番(アレックス・ラミレス),最多勝投手(セス・グライシンガー),開幕投手(石井一久)が抜け,18年間チームの顔として君臨し続けてきた古田敦也も居なくなり・・・。それこそ焼畑状態のチームを率いることになったにも関わらず,僅か2年という短期間でチームを立て直してくれたのは高田監督に他ならない。
弱者が出来る野球とは何か―両翼が拡張されリニューアルした神宮球場を本拠地にするチームで足を絡めることを指針とし,石井一の人的補償で
福地寿樹,藤井秀悟とのトレードで
川島慶三を獲得する。将来を見据え
村中恭平,
増渕竜義,
由規という若手投手も積極的に起用した。前年火の車だった中継ぎ抑えには先発で伸び悩んでいた
松岡健一を配置転換,トレードの
押本健彦と新外国人
林昌勇の加入,さらに五十嵐亮太が右肘手術から復活を遂げたこともあって早々に盤石の態勢が整備された。監督就任2年目を迎えるにあたり,弁慶の泣き所だった
福川将和,
川本良平など固定できなかった捕手を,高田監督の懇願が実る形で球団史上初となるFAによって獲得(
相川亮二)することになり,懸案事項も一気に解決させた。現場の監督として出席したドラフト会議では2007年大学社会人ドラフトで俊足野手(
鬼崎裕司,
中尾敏浩,
三輪正義),2008年には高校生左腕(
赤川克紀,
八木亮祐,
日高亮)と捕手(
中村悠平,
新田玄気),2009年が即戦力(
中澤雅人,
山本哲哉,
荒木貴裕,
松井淳)とチームの現状と将来を見据えての一貫したドラフト戦略を指示した。2年連続してFA参戦(
藤本敦士)にも乗り出すなど,選手編成の意味ではGMとして北海道日本ハムを常勝軍団に育て上げた手腕を如何なく発揮してくれた。
だがチームを預かる監督としては,2008年9月の3試合連続サヨナラ負けに端を発する1992年以来
16年ぶりの8連敗(うち7試合が1点差負け),2009年8月からの
12カード連続負け越し,1992年以来
17年ぶりの9連敗,1970年以来
39年ぶりの神宮球場10連敗,そして今年の開幕4カード目から
15カード連続勝ち越し無し,さらにチームとして
2年連続交流戦では史上ワースト2位となる
9連敗(辞任までの直近22試合で2勝20敗)と,一度狂った歯車をなかなか建て直せないという事態が3年続いたことは事実で,ここには監督としての責任が問われて然るべきである。元来高田監督というのは放任主義で,選手の指導はコーチに一任し,選手との積極的なコミュニケーションも行わなっかったとされる。
例えば4/3横浜戦(神宮)ではサヨナラ弾を放った川本が「宮本さんが起用されると思っていた」と話したように,延長に備えベンチ前で自軍投手とキャッチボールをしていたところからの代打起用されていた。
宮本慎也が「試合直前にセカンドスタメンを告げられた」と話したこともあった。5/1横浜戦(神宮)にはサイドハンド投手加賀対策に左打者7人をスタメン起用しながら,4回の第三打席2死満塁の場面で相手が左投手・高宮に交代していたこともあってか,その前日は猛打賞を放つなど直前の打席まで11打数7安打2本塁打と当たりに当たっていた6番
武内晋一にあっさり右の代打
衣川篤史を起用(結果は右飛)してしまうなど左対左に対する固定観念も強かった。
青木宣親や
田中浩康に対しては「もともと守備に気持ちが入ってない人」「下手なんです」と上から斬り捨てるような発言がメディアを通じて表に出たこともあった。
選手からしてみれば突然の交代やあらゆる打順変更などを命ぜられ,相手投手の左右や調子の良し悪しで極端にメンバーを動かしてしまう強いて言えば一貫しない起用法に対しての戸惑いが生まれ,かつその最終的な責任の所在が曖昧なままとなったことで,指揮官としての求心力は完全に失われたに等しかった。それでもこれがいい意味で
選手への刺激になったこともまた事実で,最後の最後に自らを犠牲にしてまでチームに荒治療を施してくれたことには感謝したい。
そしてそんなチーム状況下で就任した小川監督代行は,就任2試合目から青木を3番から1番に据えるという色を出した。チームの構成上青木を3番から外してしまうと,どうしてもクリーンアップを打てる打者が一人足りなくなってしまうということで,高田前監督は4/14広島戦(マツダ)-4/17巨人戦(松山)と4/21-22中日戦(ナゴヤドーム)で宮本をそこにはめることで解決しようとしたが,そうなると自然に下位打線も変更を余儀なくされる。ところが小川監督はスランプに喘いでいた
アーロン・ガイエルを3番に,4番
ジェイミー・デントナを挟んで5番に武内もしくは
飯原誉士を据えることで,宮本以下を動かすことはしなかった。この打順で東北楽天の誇る二枚看板・岩隈久志,田中将大に連勝するなど,0勝9敗の状態でバトンを受けた交流戦を9勝14敗1分にまで盛り返してきた。
セ・リーグの戦いに戻り3カード目の6/26阪神戦(神宮)からは新外国人
ジョシュ・ホワイトセルが合流。ガイエルとの併用の末に7/10広島戦(神宮)から本格的に4番を務めるようになる。外野手そしてクリーンアップの一角には和製大砲である
畠山和洋を抜擢し,8番ショートには右の荒木,左の藤本,鬼崎,
川端慎吾を相手先発の左右分け隔てなく均等にスタメンの機会を与えた末に,最終的には川端がそれをものにすることになった。川端は開幕直後からイースタンで好調をキープし,一軍にも呼ばれたことがあったが,スタメンはおろか守備機会すら与えられることなく,代打で3試合(無安打2三振)のみの出場で再び戸田行きとなっていた選手である。8青木 4田中 9飯原 3ホワイトセル 7畠山 2相川 5宮本 6川端 という基本オーダーに,火 村中 水
石川雅規 木 由規 金
館山昌平 の先発ローテーションが固定された後半戦には,8/3広島戦(神宮)-8/13阪神戦(京セラ)にかけて2002年以来8年ぶり球団史上5度目の10連勝,7/27広島戦(神宮)-8/25横浜戦(神宮)にかけても同じく2002年以来8年ぶり球団記録タイとなる神宮球場11連勝をマークし,8/24横浜戦(神宮)でとうとう最大19あった借金を完済し,4/18巨人戦(松山)以来に勝率を.500へと戻した。
一時はクライマックスシリーズ進出圏内となる3位に3.5ゲーム差まで迫るなど,いつしか1996年長嶋茂雄監督率いる巨人が首位広島と最大11.5ゲーム差から逆転優勝を果たしたことでその年の流行語にもなった「メークミラクル」と,一時発売が中止されていたものの生まれ変わって春から販売が再開された自社製品「ミルミル」とを掛け合わせた「メークミルミル」という造語まで生まれた。

最大借金19から貯金4でシーズンを終えたのは,セ・リーグでは1966年阪神以来44年ぶり2度目の快挙であった。またこの年の阪神は最終的な貯金が2であったため,それを上回りリーグ史上最高の成績となった。これこそ「メークミルミル」と呼ぶに相応しい。そんな躍進を成し遂げた小川監督の正式な就任を望むファンの声が,既定路線と言われていた
荒木大輔監督就任を覆し,とうとう現実のものとなった。
チーム成績確かに順位としては昨年クライマックスシリーズ圏内である3位から圏外の4位へと1つ下げたが,チームとしては2004年以来実に6年ぶりに勝率.500を超えた。また注目すべきは,首位とのゲーム差6.5で,最下位に終わった2007年に20.5,一昨年が5位で17.5,昨年は3位ながら15.5であったことを考えれば,いかに上位との戦力を詰めたが分かるだろう
【表2】。そして5/27-以降の勝率はリーグ断トツトップの数字で,指揮官としてはリーグ優勝した中日,ソフトバンクをも上回り12球団で最高勝率をマークした。-5/26を境にセ・リーグの勝敗表を分割すると
【表3-a】のようになり,仮に全球団がこの期間(5/27-閉幕)の勝率を維持したとして144試合に換算すると,ヤクルトは2位中日に5.0ゲーム差をつけて優勝した計算になる。ちなみにこの換算勝敗は,中日・阪神・広島の勝率とは1分以内で,ほぼ相違ないものとなっている。逆に-5/26までのペースを一年間保ってようやく100敗の大台に到達するかという数字にもなる
【表3-b】。それぞれの期間で防御率は「3.84」と「3.86」で大差ないことから,極度の打線不振がそのまま勝敗に現れていたことにもなる。その状態を見かねてフロントは大田卓司二軍打撃コーチ昇格による打撃コーチ3人態勢を提唱したが,大田コーチがそれを固辞,一度白紙に戻ったことで,
伊勢孝夫打撃アドバイザー(のちに打撃コーチ補佐)招聘の動きとなった。野村克也監督退任から12年が経ち,薄れてしまったID野球を今一度復興させる方向へとチームは歩みだした。
【表1】チーム月別成績 | | | | | | | | | | | | 通産 |
月 | 試合 | 勝数 | 負数 | 引分 | 勝率 | 順位 | 打率 | 本塁 | 得点 | 失点 | 防御 | 勝率 | 順位 |
3 | 5 | 4 | 1 | 0 | .800 | 1 | .295 | 6 | 30 | 18 | 3.68 | .800 | 1 |
4 | 24 | 7 | 16 | 1 | .304 | 6 | .249 | 23 | 76 | 96 | 3.26 | .393 | 6 |
5 | 20 | 3 | 16 | 1 | .158 | 6 | .208 | 9 | 53 | 96 | 4.46 | .298 | 6 |
6 | 22 | 14 | 8 | 0 | .636 | 1 | .279 | 19 | 100 | 94 | 3.99 | .406 | 4 |
7 | 19 | 11 | 8 | 0 | .579 | 3 | .278 | 18 | 97 | 91 | 4.50 | .443 | 4 |
8 | 26 | 18 | 8 | 0 | .692 | 1 | .312 | 30 | 163 | 115 | 3.85 | .500 | 4 |
9 | 22 | 11 | 9 | 2 | .550 | 2 | .267 | 14 | 75 | 81 | 3.20 | .507 | 4 |
10 | 6 | 4 | 2 | 0 | .667 | 2 | .259 | 5 | 23 | 30 | 4.25 | .514 | 4 |
【表2】チーム成績 ※()はリーグ順位
| 試合 | 勝数 | 負数 | 引分 | 勝率 | 勝差 | 順位 | 打率 | 本塁打 | 得点 | 失点 | 防御率 |
2010 | 144 | 72 | 68 | 4 | .514 | 6.5 | 4 | .268(2) | 124(3) | 617(3) | 621(3) | 3.85(2) |
-5/26 | 46 | 13 | 32 | 1 | .289 | 15.0 | 6 | .236(6) | 37(4) | 144(6) | 200(2) | 3.84(3) |
5/27- | 98 | 59 | 36 | 3 | .621 | -5.0 | 1 | .283(2) | 87(3) | 473(2) | 421(2) | 3.86(2) |
2009 | 144 | 71 | 72 | 1 | .496 | 22.0 | 3 | .259(2) | 116(4) | 548(3) | 606(5) | 3.97(5) |
【表3-a】5/26を境としたセ・リーグ勝敗表-5/26 | 試合 | 勝数 | 負数 | 引分 | 勝率 | 勝差 | | 5/27- | 試合 | 勝数 | 負数 | 引分 | 勝率 | 勝差 |
巨 人 | 47 | 29 | 18 | 0 | .617 | | | ヤクルト | 98 | 59 | 36 | 3 | .621 | |
阪 神 | 46 | 25 | 21 | 0 | .543 | 3.5 | | 中 日 | 95 | 53 | 40 | 2 | .570 | 5.0 |
中 日 | 49 | 26 | 22 | 1 | .542 | 3.5 | | 阪 神 | 98 | 53 | 42 | 3 | .558 | 6.0 |
横 浜 | 46 | 20 | 26 | 0 | .435 | 8.5 | | 巨 人 | 97 | 50 | 46 | 1 | .521 | 9.5 |
広 島 | 48 | 19 | 29 | 0 | .396 | 10.5 | | 広 島 | 96 | 39 | 55 | 2 | .415 | 19.5 |
ヤクルト | 46 | 13 | 32 | 1 | .289 | 15.0 | | 横 浜 | 98 | 28 | 69 | 1 | .289 | 32.0 |
【表3-b】5/27-ベース換算勝敗表とセ・リーグ順位表 | 試合 | 勝数 | 負数 | 引分 | 勝率 | 勝差 | | | 試合 | 勝数 | 負数 | 引分 | 勝率 | 勝差 |
ヤクルト | 144 | 87 | 53 | 4 | .621 | | | 中 日 | 144 | 79 | 62 | 3 | .560 | |
中 日 | 144 | 80 | 61 | 3 | .570 | 7.5 | | 阪 神 | 144 | 78 | 63 | 3 | .553 | 1.0 |
阪 神 | 144 | 78 | 62 | 4 | .558 | 9.0 | | 巨 人 | 144 | 79 | 64 | 1 | .552 | 1.0 |
巨 人 | 144 | 75 | 68 | 1 | .521 | 13.5 | | ヤクルト | 144 | 72 | 68 | 4 | .514 | 6.5 |
広 島 | 144 | 59 | 82 | 3 | .415 | 28.5 | | 広 島 | 144 | 58 | 84 | 2 | .408 | 21.5 |
ヤクルト | 144 | 41 | 100 | 3 | .289 | 46.5 | | 横 浜 | 144 | 48 | 95 | 1 | .336 | 32.0 |
横 浜 | 144 | 41 | 102 | 1 | .289 | 47.5 | | | | | | | | |
対戦成績
【表4】に目を転じると,巨人にはこれで10年連続負け越しを喫したが,-12→-13→-1とゲーム差に換算して昨年比-6.0差としたこともあり,その内容は過去2年とは全く異なるものだと主張したい。それ以上に大きく負け越したのが阪神だった。対戦打率は最多安打を獲得したマートンの.462(106-49)を筆頭に,平野.398(88-35),金本.367(60-22),新井.337(95-32),ブラぜル・城島.323(93-30)と,鳥谷.247(97-24)を除いた主力メンバーにことごとく打ち込まれた。直接「防御率」には関わらない「失策数」が突出していながらこの数字であるので,マートン・平野の上位対策がまず求められそう。城島の加入によって足が封じ込まれたことも特徴として現れている。逆に対中日戦はこれで3年連続の勝ち越し。「得点」・「安打数」・「本塁打数」・「打率」いずれもセ・リーグ5球団の中で最も低い数値にも関わらず,それ以下に相手を抑えこんでいる。中日が51勝17敗1分,勝率にして.750と大きく勝ち越したナゴヤドームでも,ヤクルトは6勝5敗1分と一つ勝ち越すなど,中日側に苦手意識が根付いてきたように思えるようなここ数年の戦いである
【表5】。昨年は「57」とリーグ最少だった失策数は「80」へと大幅に増加した。チーム最多は宮本の「12」で,藤本が「11」と続いた。2年連続でゴールデングラブ賞を受賞した宮本だが,今シーズンは宮本ならではというべきか無理な体勢から送球して記録した失策ではなく,正面の打球を後ろに逸らすような場面が何度か見られるようにもなったことが気になるところではある
【表6】。
【表4】対戦成績 | 中 日 | 阪 神 | 巨 人 | 広 島 | 横 浜 | ソフト | 西 武 | ロッテ | 日ハム | オリク | 楽 天 | 計 |
2010 | 15(1)08 | 09(0)15 | 11(1)12 | 14(0)10 | 14(1)09 | 1(0)3 | 1(0)3 | 1(0)3 | 3(0)1 | 1(0)3 | 2(1)1 | 72(4)68 |
-5/26 | 03(1)05 | 01(0)04 | 03(0)05 | 02(0)04 | 04(0)05 | 0(0)2 | 0(0)2 | 0(0)2 | 0(0)0 | 0(0)2 | 0(0)1 | 13(1)32 |
5/27- | 12(0)03 | 08(0)11 | 08(1)07 | 12(0)06 | 10(0)04 | 1(0)1 | 1(0)1 | 1(0)1 | 3(0)1 | 1(0)1 | 2(1)0 | 59(3)36 |
2009 | 13(0)11 | 15(0)09 | 05(1)18 | 12(0)12 | 11(0)13 | 1(0)3 | 2(0)2 | 3(0)1 | 2(0)2 | 4(0)0 | 3(0)1 | 71(1)72 |
【表5】対戦別チーム成績 | 中 日 | 阪 神 | 巨 人 | 広 島 | 横 浜 | ソフト | 西 武 | ロッテ | 日ハム | オリク | 楽 天 | 計 | 順位 |
得点 | 89 | 105 | 96 | 103 | 131 | 10 | 19 | 15 | 22 | 15 | 12 | 617 | 3 |
失点 | 60 | 148 | 116 | 76 | 101 | 17 | 16 | 43 | 18 | 18 | 8 | 621 | 3 |
安打数 | 198 | 208 | 212 | 228 | 261 | 30 | 29 | 31 | 41 | 32 | 34 | 1304 | 3 |
本塁打数 | 15 | 23 | 21 | 21 | 26 | 1 | 4 | 5 | 6 | 2 | 0 | 124 | 3 |
三振数 | 145 | 128 | 164 | 142 | 168 | 41 | 26 | 25 | 28 | 29 | 28 | 924 | 1 |
四球数 | 74 | 70 | 77 | 74 | 78 | 8 | 15 | 8 | 13 | 15 | 17 | 449 | 2 |
死球数 | 18 | 19 | 18 | 13 | 18 | 5 | 2 | 3 | 0 | 2 | 1 | 99 | 1 |
併殺打数 | 14 | 22 | 16 | 14 | 18 | 2 | 1 | 3 | 4 | 3 | 2 | 99 | 3 |
盗塁数 | 6 | 3 | 21 | 12 | 12 | 3 | 1 | 1 | 1 | 2 | 4 | 66 | 4 |
失策数 | 10 | 22 | 10 | 17 | 11 | 3 | 0 | 4 | 1 | 1 | 1 | 80 | 2 |
打率 | .255 | .261 | .259 | .283 | .306 | .221 | .223 | .235 | .297 | .242 | .243 | .268 | 2 |
防御率 | 2.13 | 5.73 | 4.23 | 2.74 | 3.88 | 3.65 | 4.19 | 9.00 | 4.50 | 4.25 | 1.62 | 3.85 | 2 |
【表6】守備成績チーム | 守備率 | 試合 | 守機備会 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 捕逸 |
参加 | 球団 |
横 浜 | .986 | 144 | 5497 | 3801 | 1618 | 78 | 319 | 116 | 7 |
ヤクルト | .9854 | 144 | 5516 | 3861 | 1575 | 80 | 343 | 127 | 11 |
阪 神 | .98508 | 144 | 5497 | 3850 | 1565 | 82 | 389 | 141 | 4 |
広 島 | .98502 | 144 | 5475 | 3839 | 1554 | 82 | 333 | 124 | 6 |
中 日 | .984 | 144 | 5566 | 3856 | 1619 | 91 | 345 | 125 | 8 |
巨 人 | .982 | 144 | 5501 | 3837 | 1564 | 100 | 341 | 120 | 8 |
例年得意としてきた交流戦では,ちょうど絶不調期と重なったこともあり,初の勝率3割台(.391),過去最低の11位に終わったが,それでも過去6年間の通産順位では3位阪神と0.5差の4位に留まり,セ・リーグ最多勝は保っている。今年は1位〜6位をパ・リーグが独占し,セ・リーグのレベルが低いと揶揄されたが,トータルで見ると決してそのようなことはなく,上位2球団(ソフトバンク・千葉ロッテ)と下位2球団(広島・横浜)が抜きんでているだけで,それほどまでの差は無いということは留意してもらいたい
【表7】。
【表7】交流戦通産成績[2005-2010] | 試合 | 勝数 | 負数 | 引分 | 勝率 | 勝差 |
福岡ソフトバンク | 168 | 100 | 65 | 3 | .606 | |
千葉ロッテ | 168 | 92 | 70 | 6 | .568 | 6.5 |
阪 神 | 168 | 86 | 76 | 6 | .531 | 12.5 |
東京ヤクルト | 168 | 88 | 79 | 1 | .527 | 13.0 |
巨 人 | 168 | 84 | 77 | 7 | .522 | 14.0 |
北海道日本ハム | 168 | 85 | 78 | 5 | .521 | 14.0 |
中 日 | 168 | 84 | 81 | 3 | .509 | 16.0 |
埼玉西武 | 168 | 81 | 84 | 3 | .491 | 19.0 |
オリックス | 168 | 76 | 88 | 4 | .463 | 23.5 |
東北楽天 | 168 | 74 | 92 | 2 | .446 | 26.5 |
広 島 | 168 | 69 | 94 | 5 | .423 | 30.0 |
横 浜 | 168 | 66 | 101 | 1 | .395 | 35.0 |
小川采配の堅実さは是か非か小川監督が青木を1番に据えたことで必然的に初回から青木が出塁することが多くなった。首位打者を獲った打者なのだから当然といえば当然であるかもしれない。そんな青木を塁に置いてまずどんな攻撃を仕掛けるべきなのか。
ほとんどのケースで犠打が選択されたが,この作戦にネット上では「またか」「コピペ」「つまらん」などの声がよく見られた(浅い回はテキスト観戦が多いので余計目についただけかも知れないが)。またこのケース(初回0死一塁以上)で,古田兼任監督はテレビ朝日系列のスポーツバラエティ番組で,”捕手としては(投手の立ち上がりに犠打で)確実にアウトを1つ献上してくれる方が助かる”という旨の発言をし,自身も監督してアダム・リグスを2番に置き,犠打をしない攻撃的布陣を組んでいた。参考までに2009年セパ全試合での統計によれば初回0死一塁のケースで得点が1点以上が入る確率は犠打成功時が約36%,犠打失敗時が約40%というデータが提示されていた。
それでは実際に今シーズン初回先頭打者が出塁したケースについて,2番打者の打撃成績と初回の得点および当該試合の勝敗を
【表8-a】【表8-b】に示す。ただし先頭打者本塁打が出た4試合は除外してある。
【表8-a】初回先頭打者出塁時にみる2番打者の結果と得点・勝敗(-5/26)月日 | 球場 | 対戦相手 | 先発投手 | 1番 | 結果 | 2番 | 結果 | 得点 | 勝敗 |
3.27 | 東京ド | 巨人 | ゴンザレス | 福地 | 右安 | 田中 | 一飛 | 1 | ○ |
4.03 | 神 宮 | 横浜 | 藤江 | 福地 | 左安 | 鬼崎 | 四球 | 7 | ○ |
4.06 | 神 宮 | 広島 | 青木高 | 福地 | 右2 | 田中 | 一犠 | 1 | ● |
4.09 | 甲子園 | 阪神 | 安藤 | 三輪 | 中安 | 田中 | 三ゴ | 1 | ○ |
4.11 | 甲子園 | 阪神 | 下柳 | 飯原 | 中安 | 田中 | 投犠 | 0 | ● |
4.22 | ナゴヤ | 中日 | 吉見 | 田中 | 左安 | 森岡 | 一犠 | 0 | ● |
4.23 | 横 浜 | 横浜 | 清水 | 田中 | 四球 | 森岡 | 捕邪 | 0 | ○ |
4.25 | 横 浜 | 横浜 | 加賀 | 田中 | 右安 | 森岡 | 投犠 | 0 | ● |
4.30 | 神 宮 | 横浜 | 三浦 | 田中 | 中安 | 宮本 | 投犠 | 5 | ● |
5.01 | 神 宮 | 横浜 | 加賀 | 上田 | 右安 | 森岡 | 投犠 | 2 | ○ |
5.04 | 東京ド | 巨人 | ゴンザレス | 福地 | 中安 | 宮本 | 四球 | 0 | ● |
5.05 | 東京ド | 巨人 | 東野 | 福地 | 左安 | 上田 | 中飛 | 0 | ● |
5.09 | ナゴヤ | 中日 | 朝倉 | 福地 | 中安 | 田中 | 右安 | 4 | ○ |
5.15 | 神 宮 | ソフト | 和田 | 田中 | 左安 | 宮本 | 投犠 | 0 | ● |
5.19 | 西武ド | 西武 | 石井一 | 田中 | 右2 | 宮本 | 捕ゴ | 0 | ● |
5.26 | 神 宮 | 楽天 | 戸村 | 福地 | 右安 | 田中 | 投ゴ | 0 | ● |
【表8-b】初回先頭打者出塁時にみる2番打者の結果と得点・勝敗(5/27-)月日 | 球場 | 対戦相手 | 先発投手 | 1番 | 結果 | 2番 | 結果 | 得点 | 勝敗 |
6.09 | 札幌ド | 日本ハム | 増井 | 青木 | 中安 | 田中 | 捕犠 | 0 | ○ |
6.12 | ク宮城 | 楽天 | 岩隈 | 青木 | 中安 | 田中 | 投犠 | 0 | ○ |
6.14 | 神 宮 | 日本ハム | 武田勝 | 青木 | 中安 | 田中 | 投犠 | 4 | ○ |
6.20 | マツダ | 広島 | ジオ | 青木 | 中安 | 田中 | 投犠 | 0 | ○ |
6.24 | 神 宮 | 巨人 | 内海 | 青木 | 二安 | 福地 | 捕犠 | 1 | ● |
6.25 | 神 宮 | 阪神 | 久保 | 青木 | 中安 | 田中 | 三振 | 0 | ● |
6.26 | 神 宮 | 阪神 | 鶴 | 青木 | 左2 | 田中 | 一飛 | 0 | ○ |
6.29 | 那 覇 | 横浜 | 三浦 | 青木 | 中安 | 田中 | 一犠 | 0 | ○ |
7.06 | 倉 敷 | 阪神 | スタンリッジ | 青木 | 中安 | 田中 | 捕邪 | 0 | ● |
7.11 | 神 宮 | 広島 | スタルツ | 青木 | 投安 | 田中 | 二安 | 1 | ○ |
7.28 | 神 宮 | 広島 | 今井 | 青木 | 四球 | 田中 | 一犠 | 1 | ○ |
7.29 | 神 宮 | 広島 | スタルツ | 青木 | 左安 | 田中 | 投犠 | 0 | ○ |
8.04 | 神 宮 | 中日 | 山井 | 青木 | 左安 | 田中 | 投犠 | 3 | ○ |
8.06 | 横 浜 | 横浜 | 大家 | 青木 | 右安 | 田中 | 遊ゴ | 8 | ○ |
8.08 | 横 浜 | 横浜 | 大家 | 青木 | 中安 | 田中 | 一安 | 1 | ○ |
8.10 | 神 宮 | 巨人 | グライシンガー | 青木 | 遊安 | 田中 | 捕犠 | 0 | ○ |
8.13 | 京セラ | 阪神 | 鶴 | 青木 | 左安 | 田中 | 投犠 | 2 | ○ |
8.21 | ナゴヤ | 中日 | 山本昌 | 青木 | 左安 | 田中 | 投犠 | 1 | ● |
8.22 | ナゴヤ | 中日 | 中田賢 | 青木 | 左2 | 田中 | 二ゴ | 0 | ○ |
8.24 | 神 宮 | 横浜 | 清水 | 青木 | 死球 | 田中 | 一犠 | 0 | ○ |
8.25 | 神 宮 | 横浜 | 高崎 | 青木 | 左2 | 田中 | 捕犠 | 0 | ○ |
8.28 | 神 宮 | 阪神 | 秋山 | 青木 | 四球 | 田中 | 投犠 | 0 | ● |
8.31 | 石 川 | 巨人 | 東野 | 青木 | 右安 | 田中 | 捕邪 | 3 | ○ |
9.01 | 富 山 | 巨人 | 藤井 | 青木 | 三失 | 田中 | 一犠 | 0 | △ |
9.03 | 横 浜 | 横浜 | 阿斗里 | 青木 | 四球 | 田中 | 投犠 | 0 | ○ |
9.04 | 横 浜 | 横浜 | 大家 | 青木 | 右安 | 田中 | 三ゴ | 0 | ● |
9.09 | 神 宮 | 広島 | 前田健 | 青木 | 右2 | 田中 | 捕犠 | 1 | ● |
9.12 | 甲子園 | 阪神 | 秋山 | 青木 | 中安 | 田中 | 投犠 | 0 | ● |
9.15 | 神 宮 | 巨人 | 内海 | 青木 | 三安 | 宮本 | 投犠 | 0 | ● |
9.16 | 神 宮 | 巨人 | 高木 | 青木 | 左安 | 宮本 | 投併 | 0 | ○ |
9.23 | マツダ | 広島 | 前田健 | 青木 | 中安 | 田中 | 遊ゴ | 0 | ○ |
9.25 | 神 宮 | 巨人 | 藤井 | 青木 | 中安 | 田中 | 投ゴ | 0 | ● |
10.8 | 東京ド | 巨人 | 内海 | 青木 | 左2 | 川端 | 捕犠 | 1 | ○ |
【表9】初回先頭打者出塁時にみる犠打と得点・勝敗 | | | 犠打成功 | 犠打失敗 | 連続出塁 |
| 試合 | 勝率 | 試合 | 得点率 | 勝率 | 試合 | 得点率 | 勝率 | 試合 | 得点率 | 勝率 |
-5.26 | 16 | .375 | 7 | .429 | .143 | 6 | .333 | .500 | 3 | .667 | .667 |
5.27- | 33 | .688 | 21 | .381 | .700 | 10 | .200 | .600 | 2 | 1.00 | 1.00 |
計 | 49 | .541 | 28 | .393 | .536 | 16 | .250 | .563 | 5 | .800 | .800 |
注)「連続出塁」とは犠打成功,犠打失敗のいずれにも含まれないケース。「得点率」とは初回に1得点以上記録した試合で割ったものをそれぞれ示している。
小川体制になってから初回に走者を置いたケースで打球が外野まで飛んだ試合は皆無で,いわゆるエンドランが成功した形になったことは一度も無かった。得点率も犠打の成功/失敗に関わらず
高田監督時代の方が高かった。それでも小川監督が率いてから初回に犠打を成功させた試合の勝率は,
チーム勝率(.621)をさらに上回る.700をマークしており,さらに1番青木・2番田中のコンビに限れば,3試合に1試合しか得点にはつながらなかったものの(得点率.333),13勝4敗1分で
勝率.765にまで上昇している(失敗時は5勝4敗勝率.555得点率.222)。つまるところこれは采配が一貫され,選手がそれを理解し,個々が与えられた役割をこなすという相互の信頼関係が生んだ賜物なのだろうか・・。
これを『灯台下暗し』というのだろう。まさかこんな身近なところに救世主がいたとは・・・。それほどまでにヘッドコーチ時代の小川コーチは目立たなかった。ベンチの隅でただ黙々と高田監督のサインを伝えるだけ。ヘッドとして監督に何かを進言したとしても果たして受け入れられているのだろうかと疑うほどに地味な存在で,5/26未明の後任人事発表の際にも「トップを代えたところで,何も変わらない。むしろ根本的問題を後回しにするだけ」
*1だと感じていた。だが翌27日の初采配後に「コミュニケーション・風通し・活気。勝利こそ掴めなかったが,止まっていた何かが動き出した気がした」
*2と綴ったことは今思えば決して間違っていなかった。
試合後の談話において「私のミス」と勝敗の責任は全て自分にあると立場を明確にさせた。崩壊しかけた組織にあってある程度のリスクを背負わなければ前には踏み出せないと,畠山らをレフトで起用し着眼点を変えた。ファームから昇格させたばかりの荒木,鬼崎,川端を少なくとも2試合は続けてスタメン起用したように忍耐強さも見せた。これは後々に明らかになったことだが,レギュラーから弾き出された形になった福地,デントナ,ガイエルには自ら口頭でのフォローを欠かさなかったという。6/20広島戦(マツダ)で大きな走塁ミスを犯した飯原をその裏の守備から即ベンチに下げるという厳格さを見せ次の試合はスタメンからも外したが,その試合で代打から途中出場の機会を与え,次の試合でも同様の起用をし,飯原自身も2試合続けて安打を放つという結果で応え,ミスから3試合後の6/24巨人戦(神宮)には再びスタメンに戻すという一連の起用法も実に印象的だった。現場の最高責任者として選手のモチベーションを高め,チームという組織を再構築することができたのは小川監督の長けた人心掌握術によるものも少なくないだろう。そんな小川監督を端的に紹介した記事があったのでここに引用させていただく。
時の顔 プロ野球ヤクルトの監督に就任した小川淳司さん
高田繁前監督が成績不振で辞任した5月下旬以降,監督代行としてヤクルトを立て直した。貯金23は今期の指揮官で最多。9年間の二軍監督の経験を生かし,くすぶっていた選手の力を巧みに引き出した。サヨナラ本塁打の飯原誉士選手には自腹を切って贈り物をするなど,きめ細かい気配りも。選手からの信望の厚さも決め手になって,監督に昇格した。「これも頑張ってくれた選手のおかげ。これからもよろしくお願いします,と言いたい」との言葉には,人柄がにじみ出た。千葉・習志野高で夏の甲子園の優勝投手。中大時代には大学日本代表で巨人の原辰徳監督,オリックスの岡田彰布監督と中軸を組んだが「高校の時が自分のピーク。二人と僕は実績が違うから…」とどこまでも謙虚だ。中日戦で自軍の打者に死球が相次ぎ,落合博満監督に「逃げるのも技術」と挑発されても「登録を外すほどでなくてよかった」。翌日のメンバー表の交換では年長の落合監督に対し,いつものように帽子をとり,頭を下げてあいさつしていた。監督に就任しても「何も変えない」と強調し,「これからも選手が働きやすい環境をつくっていきたい」。管理型,放任型とは一線を画した手法でチームを操縦する身上を口にした。「監督のストレスは感じないのでは。二軍監督時代にたくさん負けて,免疫ができているから」と笑って言える。温厚さと実直さで,球団内では「会社勤めもできる人」と言われている。家族は夫人と1男1女。千葉県出身。53歳。【2010(平成22)年10月13日 信濃毎日新聞6版 総合2面】
おわりに〜2011シーズンに向けて今オフ最もファンをやきもきさせたであろう林昌勇の残留交渉には成功した。彼が移籍することになってしまうと,投手陣の編成は根本から考え直さなければならなかった。外国人に対する多額の年俸には慢心を心配する声もあるが,本人が2年後のメジャー挑戦を匂わせるなど,高いモチベーションがあればそれほどまでに心配することもなさそうだ。
残念ながらドラフトで即戦力候補斎藤佑樹の獲得することができなかったため,石川,館山,村中,由規の先発4本柱に次ぐ先発の台頭が待たれる。主に前半戦で7勝を挙げた中澤,かつての新人王
川島亮,シーズン中にそれぞれ1試合だけ先発の機会を与えられた赤川,
山本斉,
山岸穣,秋季キャンプに抜擢され小川監督の評価も高かった日高,2年目の
平井諒らの争いに期待するしかなく,ある程度計算が立てられるような実績ある外国人を一枚獲得したいところ。
林昌勇につなぐまでのセットアッパーは松岡,増渕,押本で盤石なものになった。ただしこの3人に続く投手がいないのもまた実情で,彼らを勝ちパターンは当然ながら,ビハインドあるいは大量リードの場面でも投入しなければならないこともしばしばあった。
橋本義隆,
松井光介,
吉川昌宏といった経験豊富な投手にはセットアッパーの負担を減らすような投球を期待したい。ドラフト2位右腕
七條祐樹も最初は中継ぎで様子をみることにになるだろうか。絶対数が少ない左腕には
佐藤賢,
渡辺恒樹,ルーキー
九古健太郎が一年を通してブルペン待機してくれるようでないとバランスが悪くなる。そして何より4年間登板の無い
石井弘寿の復帰を願うばかりだ。伸び悩む
加藤幹典,
一場靖弘,
高市俊,
高木啓充に活路は見いだせるのか。
山本哲と八木は実戦で投げられるようになることが最優先である。
ラファエル・フェルナンデス,
上野啓輔は支配下選手登録を目指す。
一方野手最大の不安は来季も4番を予定するホワイトセルにあるような気がする。途中来日初年は好成績を残したものの,翌年はサッパリというケースは過去に多々あった。実際6月4試合打率.417 2本塁打 6打点,7月17試合打率.291 4本塁打 16打点,8月26試合 打率.368 7本塁打 22打点だったものが,9月21試合で 打率.221 2本塁打 9打点と極端に成績を落としている。相手からのマークも厳しくなり,高めの釣り球など弱点とされるコースを徹底的に攻められつつあるので,それを跳ね返すだけの適応力を見せてもらうしかあるまい。
不動の1番センター青木を挟むことになる外野の2枠には,後半戦レギュラーを掴んだ飯原,畠山。デントナに代わる右の外野手として獲得した
ウラディミール・バレンティン,レギュラー奪取に燃える福地,ガイエル,オリックスから移籍の
濱中治,2009年のキャンプ・オープン戦以来に復帰となった
宮出隆自,一軍で自信をつけた
上田剛史,野手転向2年目で結果が求められる
雄平と激戦の様相を呈してきた。2年目の松井淳,ルーキー
川崎成晃,
又野知弥はまずはファームで外野の定位置を掴みたいところ。中尾は与えられた出番を確実にモノにしていかないともうあとがない。
頑丈な体と堅守を誇るセカンド田中は来季こそオールスター選出とゴールデングラブ賞獲得を叶えて欲しい。通産2000本安打まであと168本と迫った宮本は,来季何本安打を積み重ねられるかが焦点になるが,今シーズン同様定期的に休養を与えていくことになることは間違いない。最大の激戦区はショート。後半レギュラーを掴んだ川端に,右肘手術から復帰する川島慶,さらに藤本,荒木,鬼崎がそこに挑む形になる。大型ショートと呼び声高いドラフト1位指名の
山田哲人がここに割りこめるかも楽しみである。
野口祥順,三輪,
森岡良介はその脚力で一軍に残りたいところ。武内,
松元ユウイチ,
吉本亮は代打と内外野の守備がこなせる選手であり,出番を窺う。
正捕手としては勿論,打者としてもチームトップの65打点を稼いだ相川の存在はもはや欠くことができないほど大きなものとなった。2番手捕手には川本,3番手捕手に福川と控えるが,ファームで優先的にマスクを被り英才教育を受けた中村が二人を脅かすまで成長出来るかが楽しみである。さらにドラフト3位で
西田明央が入団したことで,衣川,新田の両名は捕手というよりも右の代打として勝負を懸けるしかなくなってきた。
水野祐希は焦らず捕手としての仕事をこなすことだ。
麻生知史,
曲尾マイケ,
北野洸貴,
佐藤貴規という4名の育成選手からスワローズ史上初野手としての支配下登録なる選手は現れるか。
2001年若松勉監督が率いて4年ぶり6度目となるセ・リーグを制覇してからはや9年。歓喜の優勝の輪の中にいた選手はもう宮本と石井しか残されていない・・。福地,相川,ユウイチ,野口,畠山,石川,福川のようにプロ10年以上在籍しながら優勝未経験の選手も増えてきた。
ファームには野村ID野球の名参謀である
松井優典二軍育成兼寮長が13年ぶり,選手会長も務めた
伊東昭光二軍投手が4年ぶり,中継ぎエース
加藤博人二軍投手が12年ぶり,そしてブンブン丸
池山隆寛二軍打撃が9年ぶりにコーチとしてそれぞれスワローズに復帰した。スワローズの伝統である明るいチームワークと,野村・若松両監督の下で選手あるいはコーチとしてともに優勝を経験した
伊藤智仁投手,
佐藤真一打撃,
飯田哲也守備走塁,
城石憲之守備走塁,
中西親志バッテリー,
真中満二軍監督,
土橋勝征二軍守備走塁,
度会博文二軍守備走塁,さらに高田前監督に請われた指導者の中では唯一残留することになる
淡口憲治二軍打撃,2001年日本シリーズを敵として戦った
古久保健二二軍バッテリーというコーチングスタッフとがうまく融和して,
”優勝”の二文字を目指して欲しい。ただただそれを願うばかりである。
その人身掌握術で,瀕死の燕を救った小川淳司監督なら必ずや成し遂げてくれるはずだ。信じよう。
10年ぶりの美酒を味わうその瞬間を―。
参考資料二宮清純「ヤクルト・小川淳司 史上最強の地味監督」,『SPORTS COMMUNICATIONS』,スポーツコミュニケーションズ,2010.11
http://www.ninomiyasports.com/sc/modules/bulletin02/article.php?storyid=4587 http://www.ninomiyasports.com/sc/modules/bulletin02/article.php?storyid=4592阿部珠樹「<ヤクルト新監督の野球哲学> 小川淳司[代行から監督の座へ] 燕を甦らせた男の眼力と深謀遠慮」,『Sports Graphic Number』第766号,文藝春秋,2010.11
http://number.bunshun.jp/articles/-/65176 http://number.bunshun.jp/articles/-/65176?page=2 http://number.bunshun.jp/articles/-/65176?page=3『週刊ベースボール』第65巻 第56号 通産3025号,ベースボールマガジン社,2010.12
ニッカンスコア速報
http://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/2010/s201003.html http://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/2010/s201004.html http://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/2010/s201005.html http://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/2010/s201006.html http://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/2010/s201007.html http://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/2010/s201008.html http://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/2010/s201009.html http://www.nikkansports.com/baseball/professional/schedule/2010/s201010.html