屈辱の21年ぶりの最下位からのチーム再建を託し高田繁新監督を迎え入れた。
しかし前年60勝を挙げた投手陣から,最多勝のグライシンガー(16勝)・石井一久(9勝)・藤井秀悟(7勝)・シコースキー(1勝)と半分以上の33勝を挙げた投手が退団。野手も不動の4番・ラミレスが讀賣へ移籍したことで,戦前より戦力不足は否めなかった。
その穴を埋めるべく高田監督が打ち出したのは長打力不足を足を絡めた機動力で補う「スモール・ベースボール」。キャンプ・オープン戦を通しこの方針を徹底させ,相手チームにも足を使った攻撃をしてくることを意識させることに成功した。
そして迎えた開幕カードは,4番とエースを奪われた因縁の巨人戦。その機動力が早速発揮され,結果チーム50年ぶりとなる開幕巨人戦3タテ。さらには開幕7試合連続6得点以上という日本プロ野球史上初の記録で,早くも貯金を5とした―。
ところがその勢いは続かない。なかなか連勝が出来ず,必死で5割ラインを死守するも,とうとうその貯金も4月末に使い果たしてしまう。交流戦に入って負けが込みはじめ,6月9日には借金が8まで膨れ上がる。だがそこで沈まなかった。
7月20日に勝率を5割まで戻すことに成功。7月23日から再び5割を切るも,クライマックスシリーズ進出圏内となる3位までのゲーム差は,8月16日に1.0差まで詰め寄った。だが翌日敗れ3位浮上のチャンスを逃すと,それからズルズル5連敗を喫するも,8月30日から5連勝で9月4日には3位と0.5差の4位に浮上。
しかしながら9月9日甲子園で矢野にサヨナラ本塁打を浴び敗れた試合から悪夢のような8連敗。しかもうち7試合が1点差というなんとも悔しい負けが続いた。
結局その8連敗が最後まで響く形となる66勝74敗=借金8で高田監督就任一年目のシーズンが幕を閉じた―。勝負の世界たら・ればは禁句だが,あの8連敗がせめて4勝4敗だったなら・・・と思ってしまう。
【表1】チーム成績 ※()はリーグ順位
試合 | 勝数 | 負数 | 引分 | 勝率 | 勝差 | 順位 | 得点 | 失点 | 本塁打 | 打率 | 防御率 | |
2008 | 144 | 66 | 74 | 4 | .471 | 17.5 | 5 | 583(2) | 569(4) | 83(5) | .266(4) | 3.75(4) |
2007 | 144 | 60 | 84 | 0 | .417 | 20.5 | 6 | 596(3) | 623(4) | 139(2) | .269(2) | 4.07(5) |
注)チーム本塁打は阪神と同一。チーム打率は巨人・横浜と同一。
【表1】で着目したいのは,チーム本塁打が139→83と56本も減少したにもかかわらず,総得点は596→583と僅か13点の減少に留まっている点だ。長打力を機動力で補うという当初の方針は達成されたと評価することができるだろう。これを裏返せば,長打力が発揮されるならばさらなる得点力アップが望めるということだ。長打力不足はシーズン通しての課題として首脳陣も把握しているだけに,来季への期待としたい。
【表2】イニング別失点
イニング | 2008 | 2007 |
1 | 88 | 115 |
2 | 55 | 61 |
3 | 44 | 62 |
投手陣も失点・防御率共に成績はアップ。昨年目立った序盤でゲームを壊すような大量失点も大幅に改善された。【表2】
【表3】対戦成績
巨 人 | 阪 神 | 中 日 | 広 島 | 横 浜 | 西 武 | オリク | 日ハム | ロッテ | 楽 天 | ソフト | 計 | |
2008 | 06(0)18 | 10(1)13 | 13(1)09 | 11(1)12 | 15(0)09 | 2(0)2 | 3(0)1 | 1(0)3 | 1(0)3 | 2(0)2 | 2(0)2 | 66(4)74 |
2007 | 10(0)14 | 08(0)16 | 07(0)17 | 11(0)13 | 13(0)11 | 3(0)1 | 3(0)1 | 1(0)3 | 2(0)2 | 2(0)2 | 1(0)3 | 60(0)84 |
次に対戦カード別成績【表3】。やはり巨人戦の数字の悪さが目を引く。先述のようにこのカードは開幕3連勝で始まった訳だから,その後は3勝18敗と全く歯が立たなかったのだ。
今シーズンは3連敗以上を9回記録した【表4】が,リーグ戦7回のうち6回に対巨人戦が絡んでいることが分かる。ちなみに交流戦期間中はいずれもロッテ戦。
対巨人はこれで8年連続負け越し。今世紀になって未だ巨人に勝ち越すことが出来ていない・・・。こうして次のカードにまで影響してしまうほど,そのアレルギーは深刻。強力巨人打線に対して物怖じせず,強気で攻められる投手の出現を待ちたいと思う。
【表4】3連敗以上内訳
日付 | 数 | 対戦相手内訳 | ||
4/05-4/11 | 4 | 中日2広島1巨人1 | ||
5/03-5/06 | 4 | 巨人3横浜1 | ||
5/24-5/29 | 5 | ロッテ1楽天2日ハム2 | ||
6/07-6/09 | 3 | 西武1ロッテ2 | ||
7/02-7/04 | 3 | 巨人2広島1 | ||
7/23-7/27 | 4 | 横浜1巨人3 | ||
8/17-8/26 | 5 | 中日1巨人2阪神1広島1 | ||
9/09-9/16 | 8 | 阪神3巨人3広島2 | ||
9/24-9/28 | 3 | 中日1広島2 |
【表5】ホーム・ビジター別対戦成績
巨 人 | 阪 神 | 中 日 | 広 島 | 横 浜 | 西 武 | オリク | 日ハム | ロッテ | 楽 天 | ソフト | 計 | |
[内訳] | 06(0)18 | 10(1)13 | 13(2)09 | 11(1)12 | 15(0)09 | 2(0)2 | 3(0)1 | 1(0)3 | 1(0)3 | 2(0)2 | 2(0)2 | 66(4)74 |
ホーム | 4(0)8 | 5(1)6 | 7(1)4 | 7(0)5 | 7(0)5 | 1(0)1 | 2(0)0 | 0(0)2 | 0(0)2 | 0(0)2 | 1(0)1 | 34(2)36 |
ビジター | 2(0)10 | 5(0)7 | 6(1)5 | 4(1)7 | 8(0)4 | 1(0)1 | 1(0)1 | 1(0)1 | 1(0)1 | 2(0)0 | 1(0)1 | 32(2)38 |
昨年はビジターゲームでの借金が実に「28」もあったが,今年は東京ドームでの成績こそ相変わらずであるものの,その借金を「6」にまで減らすことができた【表5】。
【表6】神宮球場での成績比較
2008 | 2007 | |
本塁打 | 33 | 79 |
打点 | 244 | 321 |
打率 | .266 | .281 |
防御率 | 3.44 | 4.19 |
被本塁打 | 67 | 90 |
逆にホームである神宮球場での戦いに苦しめられた。両翼が10メートルずつ拡張された神宮球場での成績【表6】を見ると,球場が広くなった影響が投手陣にとって「+」・攻撃陣にとって「−」に作用しているのが一目瞭然である。
再び【表5】に目を転じると,巨人が8勝,横浜にとっての5勝もビジターカードとしては最多を挙げているように,それぞれのホームグランド同様にビジターである神宮でも,チームの持ち味である長打を発揮して勝利を収めているのだ。この辺りも来季の戦い方のヒントになるかもしれない。
それでは個人成績に移ろう。
【表7】先発投手成績(リリーフ登板時の成績は含まない)
試合 | 防御率 | 投球回 | 勝利 | 敗北 | 勝率 | 失点 | 自責 | 打者 | 被安 | 被本 | 三振 | 与四 | 与死 | |||
19 | 石川 雅規 | 29 | 2.68 | 194 | 2/3 | 12 | 10 | .545 | 59 | 58 | 791 | 180 | 21 | 112 | 41 | 4 |
25 | 館山 昌平 | 24 | 2.99 | 153 | 1/3 | 12 | 3 | .800 | 54 | 51 | 628 | 137 | 13 | 99 | 31 | 7 |
15 | 村中 恭平 | 21 | 4.34 | 122 | 1/3 | 6 | 11 | .353 | 60 | 59 | 530 | 107 | 13 | 105 | 59 | 7 |
17 | 川島 亮 | 20 | 4.70 | 115 | 7 | 9 | .438 | 67 | 60 | 497 | 115 | 19 | 83 | 44 | 2 | |
34 | リオス | 11 | 5.46 | 64 | 1/3 | 2 | 7 | .222 | 48 | 39 | 300 | 80 | 7 | 37 | 26 | 5 |
22 | 増渕 竜義 | 11 | 4.14 | 54 | 1/3 | 3 | 3 | .500 | 26 | 25 | 236 | 53 | 8 | 25 | 20 | 6 |
78 | ゴンザレス | 8 | 4.30 | 44 | 1 | 5 | .167 | 25 | 21 | 193 | 58 | 4 | 36 | 9 | 1 | |
69 | ダグラス | 6 | 3.94 | 32 | 2 | 2 | .005 | 15 | 14 | 133 | 30 | 3 | 16 | 11 | 2 | |
11 | 由 規 | 5 | 3.64 | 29 | 2/3 | 2 | 1 | .667 | 13 | 12 | 114 | 18 | 4 | 28 | 7 | 2 |
16 | 加藤 幹典 | 4 | 6.62 | 17 | 2/3 | 0 | 2 | .000 | 13 | 13 | 84 | 25 | 3 | 7 | 6 | 1 |
44 | 松井 光介 | 3 | 4.91 | 11 | 0 | 1 | .000 | 6 | 6 | 50 | 14 | 0 | 12 | 2 | 1 | |
14 | 高市 俊 | 1 | 0.00 | 5 | 0 | 0 | .000 | 0 | 0 | 16 | 1 | 0 | 6 | 1 | 0 | |
52 | 伊藤 秀範 | 1 | 18.00 | 1 | 0 | 0 | .000 | 2 | 2 | 6 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 |
まず先発投手編【表7】。昨年入団以来5年連続二桁勝利で途切れた石川がエースの称号を取り戻し再び二桁。最終戦では打者一人を打ち取り,逆転で最優秀防御率のタイトルを獲得した。同じく昨年はチーム事情で先発・中継ぎ・抑えとフル回転を命ぜられた館山が,先発一本でほぼ一年間ローテを守り続け,12勝3敗の成績は昨年と全く正反対の数字。セ・リーグでは表彰されないものの,勝率.800はリーグトップだった。川島亮もオフのクリーニング手術によって肩の不安が無くなった。ただしローテーションの関係で悉く巨人との対戦が続いたこともあり,負けが先行。防御率も悪化してしまった。
最大の誤算はグライシンガーの穴を埋めるべく獲得したリオス。韓国球界で22勝を挙げたという触れ込み通り,オープン戦では防御率1.50と抜群の安定感を誇ったが,シーズンに入るとサッパリ・・・。チームが波に乗ろうとすると連勝を止める。リズムが悪く打線と噛み合わない。挙句の果てにドーピング違反で契約解除。リオスが前半に作った借金5はチームにとって非常に大きかった。
シーズン当初の期待に応えられなかったという意味では増渕と加藤の名前も挙げてよかろう。二人とも開幕ローテに名を連ねたが,結果を出せず中盤に二軍降格。その後故障もあり,一軍の戦力にはなれなかった。まだ体力的にプロのレベルに達していない。来季以降その素材を開花させて欲しいと思う。
ただ若い力の無限の可能性を感じたシーズンであったことも確か。まずシーズン前半は村中。首脳陣の期待は開幕二戦目先発という形で現れる。立ち上がり緊張から制球を乱し四球を連発し3失点するも,4イニング投げ失点は初回のみ。チームが逆転し敗戦投手を免れると,翌週敵地で中日相手に7回1失点という圧巻のピッチングでプロ初勝利!その後は勝ちと負けを繰り返すも,とにかく村中登板時は打線の援護に恵まれなかった。その典型が5月3日の対巨人戦。9回一死まで巨人打線をノーヒットノーランに抑えるも打線の援護は0。亀井に初安打を許してから,最後は代打大道に走者一掃タイムリーを浴び力尽きて敗戦投手となるも,ファンには強烈な印象を与えた。その後も慣れない中5日のローテーションなど,投手陣の台所事情を支えてきたもの,8月下旬にとうとう左肘に違和感を訴え登録抹消となってしまった。その後の経過が心配されるものの,この大器は大きな可能性を秘めている。
この村中をも凌ぐ可能性を感じたのが,高卒ルーキー・由規。キャンプから高卒ビッグ3として注目されたものの,まだまだプロのレベルに達していないということで,オープン戦中に二軍落ち。ところがイースタンでめきめきとその片鱗が発揮されはじめ,8月30日に待望の一軍デビュー。結果は1回2/3を5失点と散々たるものだったが,味方が大逆転勝利で敗戦投手を免れるなど,運の強さを感じるスタートとなった。2試合目の登板となった9月6日対巨人戦でプロ初勝利。さらに凄かったのが10月の2試合。10月2日広島戦は8回無失点。10月8日横浜戦も6回二死までパーフェクトピッチングの8回1失点。新人王の権利となる30イニングまであと1/3イニング残してルーキーイヤーを終えた。「1勝2敗防御率3.64」という数字以上の内容であった。
そしてシーズン最終戦では希望枠で入団した高市が5回無失点の好投で,勝利投手の権利をもってマウンドを降りた。惜しくも勝利投手とはならなかったものの,ファーム10年ぶりの優勝の立役者である高市に,来季は待望の初勝利が懸かる。
【表8】主なリリーフ投手成績
試合 | 防御率 | 投球回 | 勝利 | 敗北 | ホールド | セーブ | 失点 | 自責 | 打者 | 被安 | 被本 | 三振 | 与四 | 与死 | |||
65 | 押本 健彦 | 67 | 3.34 | 72 | 2/3 | 5 | 6 | 27 | 1 | 31 | 27 | 302 | 74 | 8 | 46 | 14 | 1 |
21 | 松岡 健一 | 65 | 1.39 | 71 | 1/3 | 5 | 3 | 29 | 0 | 12 | 11 | 280 | 51 | 4 | 54 | 17 | 3 |
53 | 五十嵐亮太 | 44 | 2.47 | 43 | 2/3 | 3 | 2 | 12 | 3 | 13 | 12 | 171 | 35 | 3 | 42 | 6 | 2 |
12 | 林 昌勇 | 54 | 3.00 | 51 | 1 | 5 | 3 | 33 | 18 | 17 | 214 | 55 | 6 | 50 | 9 | 2 | |
中継ぎ−右投手 | |||||||||||||||||
44 | 松井 光介 | 24 | 2.67 | 30 | 1/3 | 1 | 1 | 4 | 0 | 10 | 9 | 133 | 27 | 2 | 21 | 15 | 1 |
62 | 吉川 昌宏 | 18 | 4.19 | 19 | 1/3 | 0 | 0 | 4 | 0 | 9 | 9 | 82 | 20 | 3 | 10 | 6 | 1 |
42 | 木田 優夫 | 19 | 3.05 | 20 | 2/3 | 2 | 0 | 3 | 0 | 7 | 7 | 81 | 13 | 4 | 12 | 8 | 3 |
20 | 鎌田 祐哉 | 16 | 6.86 | 21 | 0 | 2 | 1 | 0 | 16 | 16 | 103 | 33 | 5 | 19 | 8 | 1 | |
24 | 花田 真人 | 23 | 4.38 | 24 | 2/3 | 0 | 1 | 2 | 0 | 12 | 12 | 105 | 30 | 3 | 15 | 5 | 0 |
48 | 萩原 淳 | 25 | 5.63 | 32 | 1 | 0 | 0 | 0 | 23 | 20 | 144 | 44 | 5 | 16 | 9 | 0 | |
中継ぎ−左投手 | |||||||||||||||||
13 | 佐藤 賢 | 24 | 3.24 | 16 | 2/3 | 1 | 0 | 3 | 0 | 6 | 6 | 73 | 19 | 0 | 14 | 7 | 1 |
57 | 丸山 貴史 | 7 | 3.38 | 5 | 1/3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 21 | 5 | 0 | 4 | 2 | 0 |
16 | 加藤 幹典 | 4 | 19.64 | 3 | 1/3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8 | 8 | 22 | 9 | 0 | 1 | 2 | 1 |
41 | 高井 雄平 | 1 | 13.50 | 0 | 2/3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 5 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0 |
次がまさに生まれ変わった中継ぎ・抑え陣【表8】。日本ハムからトレード移籍の押本は,登板22試合目まで防御率0.00を誇った。中継ぎに配置されて変貌を遂げたのが松岡。29ホールドは阪神・久保田に次いでリーグ2位の数字。シーズン通して安定感を誇り防御率「1.39」が光る。
右肘の手術から完全復活は五十嵐。開幕戦でストッパーとしてマウンドに上がるも,最後の打者を仕留めた投球の際に左太腿肉離れを起こし翌3月29日に登録抹消されてしまう。
そこで守護神に命ぜられたのが新加入の林昌勇だった。サイドから繰り出される160キロ近いストレートで相手打者を翻弄。松岡・押本・林の「MOL」トリオはいずれも防御率0点台で,阪神の「JFK」同様に7回までリードしていれば勝てる!という雰囲気があった。
ただストッパー・林昌勇は同点時のリリーフ登板での失敗が目立った。押本に疲労が見えてくると時期を同じくして,再々調整を経て戻ってきた五十嵐が安定感を取り戻し,後半は「OMIL」という勝利の方程式が確立されたのだった。
中継ぎとしてアクシデント時のロングイニングや困ったときの先発までこなす松井・8月から合流し,2勝3ホールドの木田の存在も忘れてはならないだろう。一方で物足りなかったのが左投手(佐藤・丸山・加藤・高井)。多くの試合でブルペンは全員右投手という状態に陥るほど,左腕には泣かされた。彼らの奮起と,故障の石井弘寿の復帰を願うばかりである。
次は打者である。シーズンを終えてみて2008年のレギュラーはこの9名【表9】ということになろう。
【表9】野手成績・対戦相手別打率・左右投手別打率
試合 | 打数 | 安打 | 打率 | 本塁 | 打点 | 盗塁 | 巨 人 | 阪 神 | 中 日 | 広 島 | 横 浜 | 対右 | 対左 | ||||
29 | 福地 寿樹 | 131 | 485 | 155 | .320 | 9 | 61 | 42 | .169 | .275 | .398 | .341 | .394 | .283 | .309 | ||
6 | 宮本 慎也 | 116 | 422 | 130 | .308 | 3 | 32 | 3 | .312 | .343 | .238 | .323 | .258 | .324 | .279 | ||
23 | 青木 宣親 | 112 | 444 | 154 | .347 | 14 | 63 | 31 | .298 | .352 | .250 | .369 | .431 | .348 | .345 | ||
33 | 畠山 和洋 | 121 | 416 | 116 | .279 | 9 | 58 | 2 | .298 | .294 | .188 | .214 | .408 | .284 | .270 | ||
9 | 飯原 誉士 | 135 | 412 | 120 | .291 | 7 | 62 | 28 | .275 | .316 | .375 | .226 | .296 | .279 | .312 | ||
7 | 田中 浩康 | 144 | 510 | 148 | .290 | 5 | 50 | 4 | .358 | .299 | .301 | .326 | .200 | .263 | .345 | ||
00 | 川島 慶三 | 121 | 353 | 90 | .255 | 4 | 35 | 20 | .242 | .250 | .292 | .241 | .304 | .238 | .281 | ||
28 | 川本 良平 | 65 | 154 | 39 | .253 | 2 | 21 | 0 | .273 | .179 | .200 | .353 | .238 | .243 | .277 | ||
37 | 福川 将和 | 105 | 241 | 50 | .207 | 7 | 35 | 1 | .184 | .158 | .184 | .235 | .292 | .199 | .225 |
FAで西武に移籍した石井一久の人的補償として移籍の福地が1番に定着。高田野球の申し子として見事阪神・赤星を上回り盗塁王に輝いた。願わくば巨人戦の打率が上がってくれれば,対巨人の戦略も変わっていたことだろう。
2番は宮本。後半戦には長年守ってきたショートの定位置を後身に譲りサードとして起用されるようになったものの,打撃では安定した成績を収めた。北京五輪ではキャプテンとしてチームのまとめ役に徹した。代表からも退き,選手会会長の座も阪神・新井に引き継ぎ,来季からは肩書きこそつかないがコーチ兼任選手として,チームを引っ張ることになる。
昨年までの1番から3番となったのは青木。自己最高の.347を残すも,それを上回る打率を残したのが横浜・内川ということで,二年連続の首位打者は逃してしまった。5月にはレギュラー定着後初めて故障で一軍を離れ,8月は北京五輪に召集されたということで,万全の状態ではなかったがこの数字なのだから流石である。
リグス・ガイエルという両外国人の不振によって5/17から4番に抜擢されたのが入団8年目の畠山であった。それまで7年間監督からも不遇の扱いを受け,”二軍の帝王”などと揶揄されており,スピード野球を掲げる高田監督の方針にも沿わないと思われていた畠山。4/8に一軍にお呼びがかかると代打起用で結果を残し,悲願のレギュラーの座は4番・ファーストであった。”年俸900万円の4番打者”としてマスコミにも取り上げられた。確かに他球団の4番と比較すると,本塁打・打点とも物足りなさを感じるかもしれないが,いずれも自己最高の数字をたたき出した。本人もコメントしているが,畠山が6番に置けるような打線を組めたならば,打線は強力なものとなるに違いない。
飯原は5番だけでなく,8月に青木が離脱中には3番も務めてくれた。チーム同様開幕直後は打ちまくったが,その後パタリと当たりが止まり,前半はベンチを温める日々もあったが,きっちりとレギュラーに戻ってきた。近い将来必ず3割・30本・30盗塁を達成できるだけの選手である。さらに上を目指して欲しい。
田中はスワローズで唯一全試合出場を果たした。スタメンを外されたのも9/11の1試合のみで,2番・3番・5番・6番・7番とあらゆる打順で起用された。セカンド守備の安定感も抜群で,守備率的にも本来ならばゴールデングラブに選出されて相応しいのだが,記者投票という壁が立ち塞がった。足があるにもかかわらず盗塁数がやや物足りないだろうか。とはいえもはや田中の敵は怪我だけではなかろうか。それほど現在のスワローズにとって攻守に欠かせない選手となった。
開幕1番に座ったのは川島慶であった。チームの開幕3連勝は慶三なくしては語れない。次のカード横浜戦で右手親指付け根靭帯を損傷し離脱。それと同時にチームが勝てなくなったのだから。せっかく射止めかけたレギュラーの座を失いたくない・・気迫の回復をみせわずか3週間で一軍復帰。サードから終盤には外野へ守備固めとして入るなどユーティリティーさが光った。そしてシーズン後半戦からは宮本と入れ替わる形でショートを任されることに。宮本にはまだまだと言われたものの,急造ショートとして身体能力の高さを感じた。オフはショート一本として守備力により磨きをかける。
さて古田の退団でいよいよ一本立ちせざるを得なくなった捕手。キャンプで川本が離脱したことで開幕スタメンの座を射止めたのは福川だった。開幕から打撃好調でチームも快進撃。ポスト・古田の誕生だと喜んだのも束の間・・。リードに精彩を欠くようになると,打撃にも悪影響を及ぼした。一時は打率.200まで割り込み,何かと不満を抱いたものだ。川本が初めて一軍登録されたのは5/29。それからはスタメンが川本でリリーフ捕手に福川という併用が続いたが,交流戦終了後から川本も極度の打撃不振に陥り,再び福川に固定。福川が本塁へスライディングした際に右足首外側靱帯部分断裂という重傷を負い終盤9/20以降は川本の出番と,結局最後まで固定という訳には行かなかったのが捕手であった。ともかく8番打者としての打撃成績も散々たるもので,とうとうフロントも肝を煮やしオフにFAで横浜の相川の獲得に乗り出すことになったが,交渉の行方そしてスワローズの捕手事情はどうなるのであろうか・・・。
【表10】野手成績・うち代打成績・左右投手別打率
試合 | 打数 | 安打 | 打率 | 本塁 | 打点 | 盗塁 | 起用数 | 打数 | 安打 | 打率 | 対右 | 対左 | ||||
36 | 川端 慎吾 | 65 | 104 | 27 | .260 | 1 | 9 | 2 | 16 | 13 | 6 | .462 | .287 | .111 | ||
55 | 野口 祥順 | 17 | 29 | 8 | .276 | 2 | 6 | 1 | 7 | 6 | 2 | .333 | .286 | .273 | ||
0 | 志田 宗大 | 40 | 45 | 10 | .222 | 0 | 1 | 3 | 28 | 33 | 6 | .204 | .222 | .222 | ||
49 | ユウイチ | 80 | 134 | 34 | .254 | 0 | 15 | 0 | 54 | 44 | 10 | .227 | .267 | .167 | ||
54 | 斉藤 宜之 | 25 | 26 | 6 | .231 | 0 | 2 | 0 | 23 | 23 | 5 | .217 | .261 | .000 | ||
8 | 武内 晋一 | 116 | 169 | 39 | .231 | 1 | 13 | 2 | 39 | 33 | 6 | .182 | .248 | .100 | ||
5 | ガイエル | 79 | 225 | 45 | .200 | 11 | 35 | 2 | 20 | 16 | 2 | .125 | .188 | .288 | ||
31 | 真中 満 | 15 | 14 | 1 | .071 | 0 | 0 | 0 | 15 | 14 | 1 | .071 | .071 | - | ||
43 | 宮出 隆自 | 29 | 47 | 6 | .128 | 0 | 2 | 0 | 17 | 16 | 1 | .063 | .000 | .171 | ||
39 | 梶本 勇介 | 20 | 28 | 6 | .214 | 0 | 3 | 3 | 2 | 2 | 0 | .000 | .231 | .200 |
それ以外の選手は【表10】に掲げた。高田監督の就任で変わったこととして一二軍の入れ替えが頻繁にされるようになったことも挙げられよう。野手では水野・大原・三輪・大塚・上田・中尾を除く選手に一軍の出場機会を与えられた。残念ながらチャンスを生かせた選手というのは少ないが,風通しが良くなったことで,選手のモチベーションは上がっただろう。
武内は打撃成績こそ芳しくないが,安定感ある一塁守備を買われ,出場機会は激増した。今シーズンチームで唯一のサヨナラ勝利を収めた試合で決勝打を放ったのもこの武内である。ユウイチも5/2から閉幕まで一軍帯同し自己最多となる80試合出場を果たした。志田も年齢的に上の立場となってきてまとめ役としてもベンチで存在感を発揮するようになった。
来季に向け楽しみなのが川端と野口。川端は城石に変わってサード・ショートの守備固めを担うまでに守備力が向上。課題だった打撃も10/7にプロ初本塁打をマーク。成長著しい選手だ。スワローズ公式サイトでも,川端を同じ背番号である池山となぞらえ「奇しくも川端選手と池山選手、プロ3年目に出場したのはともに65試合。そして4年目の池山選手は127試合に出場しレギュラー獲得した。背番号同様、同じ成功の道を歩むことができるのか。期待は膨らむばかり」と紹介した。ファンとしても来季の期待度No.1野手である。
もう一人野口。10/7にはあわやサイクルヒットの大爆発。翌10/8も2試合連続本塁打を放つなどパワーとスピードを備えた大型野手であるが,その翌々日右足蜂窩識炎を発症し戦線離脱してしまうなど,如何せん彼の場合は怪我が多すぎる。怪我さえなければレギュラーに名を連ねられるだけの選手。節目の10年目の来季こそブレイクしたい。
来日2年目のガイエルは開幕15試合で7本塁打と好調なスタートをきったが,本塁上のクロスプレーで右肘を強打してから明らかに調子を落としてしまった。ズルズルと打率も急降下しとうとう二軍での調整を命ぜられたもの,腐らず練習熱心な態度が首脳陣にも評価され,オフの手術の経過も順調ということで残留が決定した。
寂しい数字となったのは真中と宮出。昨年は代打の神様としてプロ野球新記録の31安打を放った真中だったが,開幕から勝負所の代打で起用されるも僅か1安打を放ったのみで5/2に二軍落ち。今季限りでの現役引退を決心し,来季から二軍の打撃コーチに就任することになった。
宮出も悩んだ一年になってしまった。サード起用された昨年から一転。守りなれたファースト・レフト専任となったものの,打撃が鳴りを潜めてしまった。代打起用でも「.063」という数字。中途半端なハーフスイングの三振も目立った。彼の場合も本来ならば4打席立たせてそこで結果を求めたいタイプであるが,守備力・走力などを踏まえると高田野球では代打に活路を見出すしかない。かつての真中がそうであったように,そろそろ年齢・経験といった事情に素直に応じるべきなのかもしれない。
さて今季を振り返る上で目立ったここ一番での勝負弱さについて検証してみよう。今季の1点差試合は12勝25敗だった。ちなみに昨年が13勝28敗であったから,一見数字的には大差は無いように思えてしまう。ただそれで片付けてよいのだろうか?
【表11】は,それぞれの負けを,追い上げるもあと1点追いつかなかった試合:「1点追いつかず」・一時同点まで追いついたものの逆転負けした試合:「同点止まり」・1点以上のリードを守れず逆転負け:「リード守れず」の3つに分類したものである。「リード守れず」においては,説明のため実際のスコアを用いるが,
9/15
C 000 002 000 2
S 001 000 000 1
9/16
C 040 000 100 01 6
S 020 120 000 00 5
リードした「点差」を追いつかれたイニングを「回数」とし,同点のまま推移した場合は,最終的に決勝点が入ったイニングを「決勝」とした。
【表11】1点差敗戦内訳
1点追いつかず | 同点止まり | リード守れず | |||||||||||
日付 | スコア | 相手 | 日付 | スコア | 相手 | 日付 | スコア | 相手 | 点差 | 回数 | 決勝 | ||
04/09 | 0-1 | 広島 | 04/30 | 5-6x | 阪神 | 05/06 | 1-2 | 横浜 | 1 | 8 | |||
04/11 | 1-2 | 巨人 | 05/24 | 3-4x | ロッテ | 06/08 | 3-4 | ロッテ | 1 | 8 | 10 | ||
04/26 | 0-1 | 中日 | 05/29 | 2-3 | 日ハム | 06/14 | 1-2x | 日ハム | 1 | 7 | 10 | ||
05/11 | 1-2 | 広島 | 09/09 | 2-3x | 阪神 | 07/25 | 2-3x | 巨人 | 1 | 9 | |||
05/26 | 4-5 | 楽天 | 09/10 | 3-4x | 阪神 | 07/29 | 3-4 | 阪神 | 1 | 5 | 6 | ||
09/14 | 2-3 | 巨人 | 09/13 | 8-9 | 巨人 | 08/04 | 11-12 | 広島 | 5 | 8 | |||
10/02 | 0-1 | 広島 | 08/07 | 1-2 | 中日 | 1 | 6 | 7 | |||||
08/28 | 2-3 | 広島 | 1 | 4 | 6 | ||||||||
09/11 | 4-5x | 阪神 | 2 | 9 | |||||||||
09/15 | 1-2 | 広島 | 1 | 6 | |||||||||
09/16 | 5-6 | 広島 | 1 | 7 | 11 | ||||||||
10/11 | 2-3 | 巨人 | 2 | 7 |
このように純粋に投手が打たれて負けた試合というのは25試合中6試合ということになる。「1点追いつかず」の7試合を除けば1点差負け試合のうち約半数の12試合で,なんらかのイニングで野手が1点でも取って勝ち越せたならば,そのまま勝利出来た公算が高くなった訳である。
これを裏付けるのが【表12】【表13】で,点差別での投手と野手の成績である。投手の場合2点差以上ある状況と比べ「与四死球」「被打率」こそ上がるものの,「防御率」「得点圏被打率」とも下がっているので,ランナーは出すものの何とか踏ん張っていたと言える。
片や野手はその逆で「安打」こそ出るものの,「得点圏打率」が.028も劣ることから,僅差の場面でいかに得点圏まで走者を進めつつも,それを還せなかったかが分かる。このあたりがあと1点に泣いた原因と言えよう。
【表12】点差別投手成績
防御率 | 与四死球 | 披本塁打 | 被打率 | 得点圏披打率 | |
1点差以内 | 3.44 | 3.38 | .027 | .266 | .255 |
2点差以上 | 4.10 | 2.66 | .032 | .258 | .288 |
【表13】点差別野手成績
打 数 | 安 打 | 本塁打 | 打 点 | 打 率 | 得点圏 | 長打率 | |
1点差以内 | 2477 | 644 | 35 | 258 | .260 | .256 | .358 |
2点差以上 | 2279 | 620 | 48 | 284 | .272 | .284 | .391 |
ただしチームの得点圏打率はリーグ4位の.270で,一番高かった阪神の.275とそれほど差は無いのだ。レギュラー陣も飯原の.356・福地の.342など決して低い数字ではない【表14】。
それでも競り負けが多かったというのは,やはりクリーンナップを担う打者の数字の低さ故に得点に結びつかなかったのではないだろうか。特に.347の打率を誇る青木に,ここ一番での一本があまり見られなかった・・・。
【表14】得点圏打率
打数 | 安打 | 打率 | ||
9 | 飯原 誉士 | 118 | 42 | .356 |
29 | 福地 寿樹 | 120 | 41 | .342 |
6 | 宮本 慎也 | 95 | 30 | .316 |
7 | 田中 浩康 | 131 | 41 | .313 |
28 | 川本 良平 | 38 | 11 | .289 |
33 | 畠山 和洋 | 127 | 36 | .283 |
00 | 川島 慶三 | 74 | 21 | .284 |
23 | 青木 宣親 | 101 | 28 | .277 |
37 | 福川 将和 | 80 | 17 | .213 |
【表15】青木:塁状況別成績
ランナー | 打率 | 打数 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 三振 | 四球 | 死球 | 犠打 |
なし | .345 | 232 | 80 | 6 | 6 | 30 | 22 | 7 | 0 |
一塁 | .414 | 111 | 46 | 7 | 20 | 5 | 4 | 1 | 0 |
一二塁 | .231 | 13 | 3 | 0 | 3 | 0 | 3 | 0 | 0 |
一三塁 | .231 | 13 | 3 | 0 | 4 | 1 | 1 | 0 | 0 |
二塁 | .326 | 43 | 14 | 0 | 8 | 5 | 10 | 1 | 1 |
二三塁 | .286 | 7 | 2 | 0 | 5 | 1 | 1 | 0 | 0 |
三塁 | .286 | 14 | 4 | 0 | 8 | 2 | 1 | 0 | 0 |
満塁 | .182 | 11 | 2 | 1 | 10 | 3 | 0 | 1 | 0 |
青木の塁上走者状況別打撃成績【表15】を見ると,非得点圏打率は打率を更に上回る「.367」。本塁打も14本中13本が非得点圏。そして残念ながら満塁での打率が一番低くなっている。
.333以上打って当たり前の青木に対してはどうしても要求が高くなってしまうが,3番・青木が決めていたら・・・という試合はどうしても印象に残ってしまう。本来ならば青木は1番が適所であろうが,ヤクルトには同一タイプの選手が多く,逆にクリーンナップを任せられる選手は見当たらないというチーム構成もあり,こうして青木の数字を際立ててしまったが,青木なら出来るはずだと誰もが思っているのである。青木に懸かる期待は大きい。来季は是非青木のそのバットで,ファンの願いを叶えてくれ!!
終わりに
順位だけみれば6位→5位と1つしか上がらなかった。優勝チーム(いずれも巨人)とのゲーム差も20.5→17.5と3.0差しか縮めることが出来なかった。ただ昨年と比べても明らかにスワローズは変わった。それは1や3といった数字では量れるものではない。
課題はハッキリしている。それを十二分に把握して李恵践(斗山)・バレット(ツインズ)という二人の左腕,4番候補の主砲デントナ(ダイヤモンドバックス),チーム内の競争を煽るためにトライアウトで森岡(中日),吉本(福岡ソフトバンク)を獲得。
ドラフトでは未だ流動的なポスト古田候補の座を争う新田(パナソニック)・中村(福井商)と,2010年代の黄金時代を築くため赤川(宮崎商)・八木(享栄)・日高(日本文理大付)と左腕を徹底指名。
確かに今年は戦力的にお世辞でしか優勝を狙えるなんて言えなかったかもしれない・・・。でも来年に向けて確かな可能性を感じる。将来が楽しみな若い素材が多い。色んな経験を積んできたベテランもまだまだ健在だ。中堅は勝利に飢えている。
もはや”優勝してほしい”ではない。”優勝できる!!”んだ。この言葉を来季へ寄せ,『総括2008−高田監督就任初年度』としたいと思う。