C 300 020 010 6
S 010 001 010 3
大学野球が延び,試合開始が10分遅れとアナウンスされる。六大学の応援からプロへ観客の入れ替えも整然と進み,試合開始が近づくにつれ,若干レフトポール際上段に青いシートこそ見られたが,普段の神宮を思えば,まさに”超”満員。
「神宮球場を満員にしたい!」古田監督就任と同時に立ち上がったF−Projectの当初の理念がこうした形で最後に実現するというのがなんともファンとして申し訳なかった・・・
古田が場内に姿を見せると古田古田の大歓声。
スタメン発表はサプライズだった。

C田中浩HガイエルFラミレスG青木A古田BリグスE宮本D飯原@石川
まさかの4番青木。つなぎの4番ということか?!
1回表。先発石川は気負ったのだろうか?!ピリッとしない立ち上がり。新井に先制タイムリーを許すと,続く嶋にもタイムリー。その嶋はすかさず盗塁。捕手・古田の送球はワンバウンドでセカンドへ。タイミング的にはアウトのようにも見えたが,判定はセーフ。梵にもタイムリーを浴び3点目を失う。ヒットの梵もまた盗塁を試みる。またしても送球はワンバウンド。強肩捕手と相手チームに恐れられ,盗塁阻止率もナンバーワンを誇った古田であるが,もうその肩からセカンドへ矢のようなストライクを投げられるものではなかった・・・
2回裏。古田の第一打席。来場者全員に配られた「27」の直筆メッセージ入り応援ボードでスタンドが緑一色に染まる。応援歌は旧バージョン「肩の強さ 日本一だ 頼れる守備の要 勝負強く 打てよ古田 狙え三冠王」が流れる。
青木を一塁に置き,暴投で2塁へ進み,打者・古田はまさにお手本の走者を三塁へ進めるライトへのフライ。打撃はまだまだ健在だ。リグスの犠飛で1点をあげる。
その後石川も立ち直りの気配を見せるが,5回表栗原をセカンドに置き,新井に被弾。1−5リードは広がる。
5回裏。古田の第2打席。「今日も頼むぞ古田 燕の要 冴えるリードとバッティング 勝利を掴め」にのせて,スタンドはまたしても緑に染まる。1992年の14年ぶりのリーグ優勝へ向けて,ライトスタンドが蛍光緑のメガホンで満員に埋め尽くされていたあの頃を髣髴とさせる。結果は遊飛。先頭打者として出塁することは出来なかった。
6回裏。二死からガイエルのランニングホームランで3点差とし,ラミレス・青木が連続ヒットで古田に繋ぐ。場内のボルテージは最高潮に達する。一斉に立ち上がる観客,一球一球に焚かれるフラッシュ,トランペットの音がかき消される程に湧き起こる歓声。さながらメジャーリーグの球場の雰囲気だ。結果は中飛でスワローズはの反撃は1点のみ。
しかしながらさらなるドラマが8回以降待ち受けていた。
まず8回表。長年バッテリーを組んできた石井一−古田のバッテリーが実現。廣瀬に一発を浴び2−6となる。
8回裏。ガイエルの今度は打った瞬間それと分かる35号本塁打で3−6と再び3点差。二死無走者から,広島ベンチは青木に対して左の青木高をワンポイントで投入するが故意的に映った四球を与え,二死一塁。そして次打者古田を迎え,ブラウン監督は投手交代を告げ,コールされたのは,前日広島市民球場で引退登板をした佐々岡真司。二人は1989年のドラフトで指名された同期入団だ。ブラウンの粋な計らい。
広島市民最終戦でカープファンから送られた温かい古田コールの御礼だろう。ライトスタンドからの「佐々岡」コール。佐々岡への横断幕も掲げられる。実に友好的な,言葉では言い尽くせないような情景だった。最終打席は遊ゴに倒れるも,打席を終えた古田から佐々岡へ改めて花束贈呈。再びライトからの佐々岡コール。手を振ってそれに応える佐々岡。

9回表。優勝・日本一。最後はいつもこの光景だった高津−古田のバッテリー。またしてもブラウンは演出してくれる。代打に前田智徳と緒方孝市。今年こそ最下位を争うカープとスワローズであるが,1997年まではお互いAクラスの常連だった。当時の主軸といえば,内野に正田・江藤・野村。外野に金本・緒方・前田。今もカープ一筋の好敵手二人の代打起用。
9回裏。最後は永川に抑えられ,結局3−6で敗戦。5位は非常に厳しい状況に追い込まれる敗戦であった・・・。
試合を終え,一塁側に敬礼し,スタンドにサインボールを投げ入れ,グランドを後にするカープの面々。ライトからは再び佐々岡コール。
そしていよいよセレモニー。
古田敦也18年間を振り返るビデオ上映。その魂は受け継がれるという視線の先にある川本良平。
引退の挨拶。両親からの花束贈呈。「また,また会いましょう」。
18年間守り続けたホームベース上でのナインからの胴上げ。

グランド一周。最後はライトスタンドへ駆け上がり笑顔でファンに手を振る。

古田自身が意外にもサバサバした挨拶だったのかもしれないが,その場にいた自分に涙は出なかった。ただただ目の前で繰り広げられている情景をしっかりと焼付けようとしていた感じがする。鳴り止むことのない大歓声,スタンドから投げ込まれた色とりどりの紙テープ,びっしりと掲げられた引退を惜しむボード・・・。

むしろ,バックで流れていた
SunSet Swishの『ありがとう』
「本当にありがとう あなたにありがとう」
TUBEの『old baseball man』
「いつかピッチを去るよ その日がくるまでは so now do my best」
この2曲のメロディーに乗せられたこの歌詞と目の前の情景に,グッとこみ上げてくるものがあった。。。
また,セレモニー以降もずっと球場を後にせず,温かく見守ってくれたカープファンにも本当に感動した。池山のときもそうだった。お互い今年は不甲斐ない成績で,優勝からも遠ざかりつつある。お金が無いから活躍した選手はFAで流出し,外国人選手も他球団に引き抜かれる。境遇は似ている。でもファンの質は日本一だ!来年こそカープとスワローズで優勝争いをして,お金だけじゃないってところをアピールしたい!そう思った。
古田敦也はスワローズを去る。ただそれでスワローズが終わる訳ではない。古田が抜けてもスワローズはスワローズであり続ける。嬉しいこと,悲しいこと,寂しいこと,楽しいこと。スワローズとともに分かち合える。来シーズンもスワローズに声援を送り続ける。
【広島 6-3 東京ヤクルト】惜敗も超満員の神宮最終戦で古田選手兼監督を送り出す古田選手兼監督、スタメン&フル出場で18年間の現役生活にピリオド!!長年バッテリーを組んだ石井一投手や高津投手ら5投手が古田選手兼監督目掛けて全力投球!!